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蛮人
第三章

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第三章

「日本か」
「じゃあこいつ日本人か」
「顔見ればそうだな。アジア系だしな」
「それに喚いている言葉な」
「暴れてるからわかりにくいけれどな」
 それでもだというのだ。よく聞いて検証しているとだ。それは。
「日本語だな」
「何かまずいとか作り直せとか言ってるな」
「ああ、ちゃんと言ってるな」
「間違いない」
 それが話されるのだった。
「これってな」
「じゃあこいつ日本人か」
「それで誰だ?こいつ。ここ高級レストランだぞ」
 このことが指摘された。
「金持ちが行く店だからな」
「じゃあこいつ金持ちか」
「それにしちゃ下品だな」
「成金じゃないのか?」
 古い言葉での指摘が出て来た。
「小金持って有頂天になってる奴じゃないのか?」
「そんな奴か」
「こいつは」
「それで誰だろうな」
 具体的に暴れている人間が誰なのかという検証がはじまった。
「こいつな」
「金持っててここまで下品な奴な」
「一体誰だ?」
 こう考えていくとだった。するとだ。
 ここでまた一人が言った。
「ああ、こいつ漫画原作者の糟屋じゃないのか?」
「あの出て来る奴が偉そうに店でご高説たれる漫画だな」
「変な政治主張ばかり入ってる」
「美味いもの食いまくりながら上から目線でお説教言う」
「あの漫画か」
 こう書かれていってだった。
「何だ、原作者こんな奴だったのかよ」
「漫画の登場人物そのままだな」
「ああ、品のない奴だな」
「野蛮人だな」
 この言葉も書かれた。
「最低だな、こいつ」
「っていうか店で暴れるなよ」
「常識ねえのかよ、何処の馬鹿だよ」
「無教養な奴だな」
 糟屋への評価がネットで定まってきていた。
「こんな奴飯食う資格ないな」
「っていうかもうあの漫画読むの止めようぜ」
「こんな漫画雑誌で連載させるなよな」
「だよな。貴重な森林資源の無駄だよ」
「紙だって資源使うんだからな」
 書き込みがさらに過激になっていっていた。そしてだ。
 この書き込みが入った。
「これ、ネット中に広めようぜ」
「ああ、こんな奴許せるか」
「ふざけやがってよ」
「それであの漫画連載中止に追い込もうぜ」
「不買運動だ、雑誌ごとな」
「それで出版社や編集部に抗議だ」
 次第に現実への行動になっていく。
「見てろ、こんな奴」
「社会的に抹殺してやる」
「天誅だ、天誅」
「思い上がるのもいい加減にしやがれ」
 こうしてだ。実際に糟屋の動画はネット中に広まり巨大掲示板でも話題になった。それがマスコミにまで飛び火し週刊誌にも載った。

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