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とある彼/彼女の籠球人生
プロローグ
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まい、亮二も黙ってしまった。いつもは煩わしく感じてもこれが最後かと思うと、こいつの毒舌も味がある。黙られるのは少し寂しい。


「夢を……見た……」


「夢?」


「何故か……自分が女になって……女の中に混じって……バスケしてた……」


どうせ呆れられるだろう。自分だってそうだ。普通夢に見るなら過去の楽しかった記憶とかだろう。


「ブフゥ!」


が、予想とは異なりいきなり吹き出したかと思うと口元に手を当てて震え始めた。


「……なんだ……お前がそんなに…笑うのも……珍しいな……」


「当然だろう。お前、性別が変わってもまだバスケをやっているのか?」


そういえばそうだな。バスケそのものには何の疑問も抱かなかった。


「惜しかったなぁ……ジャンプボールのところまでは……いったんだが……目が覚めちまった……」


「夢の続きなら別に見てもいいんじゃないか」


「……あ……?」


「誰かのプレイを見てそのスポーツを始める人間は多い。そして、今ではお前もそんな見せる人間の一人だ。さんざん夢を見せてきたんだ、お前だって夢を見ても罰は当たらないだろう」


「…………」


「? 何だ?」


「お前がそんなこと言うなんてなぁ……。これも夢か……?」


そういえばさっきから咳も出なくなった。それも夢なら納得だ。


「だったら俺はもう夢に出ないな。夢にまで出てたらいい加減過労で倒れる」


「そっかぁ……そりゃ……残念……」


そうか……“これっきり“か……。


「また……眠くなってきた……」


「そうか……なら、もう寝ろ。流石に長居しすぎた。残りはご家族の時間だろう」


そう言って亮二が立ち上がると背を向けて━━━━。


「お休み……いい夢を……」


一言呟いて部屋を出て行った。


「……あぁ……お休み……」


そこまでが限界だった。視界が閉ざされていく。意識が沈んでいく。


「あぁ……バスケやりてぇ……」


心臓病なんていわれて病院に押し込められて数年。弱っていく身体に恐怖するよりバスケが出来ないことにストレスが溜まっていた。
なら━━━━。


(どんな姿でも……好きな事ができるなら……)


幸せ……なのだろうか……?
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