第21局
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た。
一切の悪手も疑問手も見られない、綺麗な碁だ。
「…少しは成長しただろうか、ボクは」
ふと、アキラがヒカルに声をかけた。真剣なまなざしで、ヒカルを見つめる。
視線を合わせたヒカルは、軽く口元をほころばせながら答えた。
「…ああ。なんたってお前は、オレのライバルだからな!」
そして、石音高く、まだ両者の手がついていない中央付近に白石を打ち付けた。
「さて、ここまでは穏やかに進行していたが…、ここで進藤君が仕掛けてきたかな…。ここまでの布石、何か質問は?」
尹の声に、手が挙がった。
「日高か、なんだ?」
指名とともに立ち上がったのは、気の強そうな女子生徒だった。
「右下の黒の形なのですが、定石と比べてヒラキが高い位置になっています。もともと、その定石は白の地に対して黒が厚みをとるものだと思うのですが、その黒のヒラキの位置では隙間が開きすぎているように思うのですが。せっかくの厚みにあっさり入られてしまうように思うのですが?」
「なるほど。たしかにそうだな、定石ではこの位置にヒラクが、実戦ではここだ。定石より二線高い位置だね。岸本、どう思う?」
指名された岸本が立ち上がり、意見を述べる。
「もともとの置石を活用しようとしての手だと思われます。左下隅には最初の置石がある。それを生かすための、その位置かと」
「でも、いくらなんでも高すぎじゃない?下辺はスカスカよ?」
「だが、実戦も白は下辺に踏み込んできていない。中央に手がついた」
「うーん…、むずかしいわね…」
「そうだな、藤崎さんはどう思うかな?」
尹は続けて、隣で見ているあかりに声をかけた。
「あ、はい。えーと、岸本さんでしたっけ、彼の言うとおりだと思います。付け加えると、黒としては、狭い下辺に白に入ってもらって、狭い下辺で小さく生きてもらう。生きる白を攻めながら、中央に大きな地を作ろうとしているのだと。その黒の意図を読んだ白が、先に中央に手をつけたのだと思います。下辺が全部黒地になれば確かに大きいですが、どの道下辺すべてを黒字にするのは無理だと白は見ていると思います。むしろ大きく囲わせてから、後で荒らそうとしているのかな」
あかりは、二人の対局に集中しながら、なんとなく盤面から読み取ったことを述べた。
「…なるほど、ありがとう。どうかな日高?」
「…了解しました。続きを見させてもらいます」
あかりのしっかりとした受け答えに、この子もまたかなりの実力だと尹は気がついた。
この局面までの二人の石の意図を、彼女はしっかりと見抜いているのだと。
ヒカルは中央への着手を数手でいったん止めると、下辺に深く踏み込んできた。
その、あか
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