第20局
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いた。
最近ずっとくすぶっていた自分の心が、何かあっさりと晴れていくように感じた。
いったい自分は何を悩んで何を迷っていたんだ。
自分は碁打ちだ。
碁打ちならすることは1つしかないじゃないか!
状況を理解すると、アキラの目には力強い輝きがともりだした。
「進藤、今からボクと打ってくれないか!」
「えー、オレ達は帰るとこなんだよ」
「そう言わずに、頼むっ!是非、ボクと打ってくれ!」
−…まぁ当然こうなりますよねぇ…。
−…ほんと、塔矢君が碁を辞めちゃうんじゃなんて、ぜんぜん余計な心配だった見たいね…。
必死なアキラと、困惑しつつもさっさと帰りたがっているヒカルを横目に、佐為とあかりは視線で会話を交わしていた。
「今から打つったって、囲碁の道具なんか持ち歩いてないぞ!また今度打ってやるって」
「なら、お父さんの碁会所に行こう!」
「いや、あそこ、オレ達の家と帰る方向が違うんだよなぁ。お金もかかるしさぁ」
「もちろん、席料なんかいらないさ、頼む!」
−塔矢君ってもっとクールなタイプかと思ってたんだけど…、結構熱血少年だったんだぁ。
あかりはそんなことを考えながら、二人の様子を眺めていた。ヒカルは明らかにさっさと帰りたがっているが、どうやらそれではすみそうにもなかった。
「君たち、良かったら場所を提供しようか?」
そこに、横から声がかかった。
「3人とも初めましてになるかな。私は尹。囲碁部の顧問をしている。君は塔矢アキラ君だね。通りすがりだったんだが、君たちの会話に興味を惹かれてね」
声をかけてきたのは30代程だろうか、長身の細身の男性教諭、尹だった。
彼は校長から塔矢名人の息子である塔矢アキラが入学してきていることは聞いていたが、同時に囲碁部の入部に関しては断られていることも聞いていた。
塔矢名人の口から直接、息子の腕前を聞いていた校長は、彼の入部による囲碁部のレベルアップを期待していたのだが、その目論見は早くも頓挫していた。
非常に残念ではあったが、彼が噂通りにプロ級の腕を持っているとなれば、逆に当然のことでもあった。
塔矢アキラにとっては、中学の囲碁部には何も期待できないであろう。
しかし、機会があれば塔矢アキラの碁を見てみたいと思っていた尹としては、今回の遭遇はまさに、予想外のうれしい出来事といえた。
「えーと、それで君たちは」
「あ、1年の進藤ヒカルです」
「同じく、藤崎あかりです」
「進藤君に藤崎さんか、君たちも碁を打つみたいだね」
「ええ、まあ」
突然現れた尹に驚きつつも、ヒカルは答えた。
「私は韓国で教師をしながら、子供たちに囲碁を教えていたんだよ。
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