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蒼き夢の果てに
第5章 契約
第88話 カトレア
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魔法。見た目が派手で、更に、以前にここの村に訪れた魔法使いたちが行使した事のない魔法の実演でもして見せたなら……。

「それならば、騎士従者様。北の町の神官さまに聞いた所に因ると、吸血鬼と言うのは鏡に映らない連中だそうですから、その鏡に一人、一人を映して行けば分かるんじゃないでしょうか?」

 ……信用されるかも知れない。そう、考え掛けた俺に対して話し掛けて来る一人の男性。
 村人たちの中でも割と重要な位置に居るのか、一番前の真ん中辺りに立つその男性。年齢は壮年と言うぐらい。ただ、西洋人の年齢は見た目よりも上に見える可能性が高い上に、ここは農村部で有る事から、普段の生活に追われて実年齢よりも多少は老けて見える可能性も高い。身長は俺よりも低い……かなり低いように見えるトコロから百五十から六十の間ぐらいか。
 男性としては低い身長。痩せた身体。良く動く細い目。どうにもはしっこそう……狡猾で、信用の置けない人物のように見えるその男性。

「これ、ラバン。騎士従者様に失礼で有ろうが」

 流石にこの物言いに対して、村長さんが間髪入れずに窘める。確かに、俺やタバサは見た目が幼いとは言え、貴族(魔法使い)。それに、ガリアが正式に勲功爵(シュヴァリエ)として任じた人間でも有りますから、この対応は間違った対応とは言えません。
 もっとも、俺もタバサもそんな細かい事をイチイチ気にしない人間なのですが。

 しかし……。
 しかし、ラバンか。そう言えば、村長さんの名前は確か……。
 俺が少し思考を別の方向に逸らし、そして、ラバンと呼ばれた男性を嗜めた村長さんを見つめ直す。

 黙って自らの事を見つめ出した俺に対して、少し怯え……とまでは行かないけど、それでも腫物を触るような雰囲気を発して居る村長さん。いや、村長さんだけではなく、村人たちの方からも、畏れや怯えと言った負の感情が流れて来る。
 ……う〜む、こりゃ少しマズったか。

 折角、良好な関係を築きつつ有ったトコロなのに、少し対応を間違った事に後悔の念を滲ませる俺。矢張り、貴族と平民の間の溝と言う物は、簡単には埋められる物ではない、と言う事なのでしょう。
 おそらく、この状況は……。
 少し強く見つめた事を、ラバンの発言や、その他、この場の雰囲気が俺やタバサを信用していない、と言う雰囲気が判る状態だった事に対して、俺が不満を持って居る、と感じられたのかも知れない。本当は、単に思考がダッチロールを繰り返して居たのと、本来の俺の視力が悪くて、他人を見つめる時に瞳に力を入れ過ぎる為に、他人から見ると睨んでいるように見えると言うだけなのですが。

 そう考え、地球世界のアイドルが浮かべる爽やかな笑顔を浮かべて村長さんに魅せる俺。但し、本当に爽やかだったのか、それとも引きつったような
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