参ノ巻
死んでたまるかぁ!
3
[1/7]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
うん、朝の空気はすがすがしい!よーし働くぞ〜!と早速次の日からあたしは尼姿に腕まくりで意気込んでいた。何せ石山寺は広い。やりがいはありまくりだ。尼姿はなんだかつるんとして恥ずかしいけれど、いつもは下ろしている前髪から後ろ髪までぜーんぶ尼頭巾にひっつめているおかげで、ぱっと見は本物の尼さんに見えるんだろう。これで来訪客があってもばっちりね。
「ピィ!おまえ何してる!」
「いたたた・・・何って、雑巾がけ?」
足を滑らせすってんころりんと転げたところに、丁度惟伎高と居合わせた。
「おまえなァ・・・」
惟伎高はずかずかと目の前まで来ると、ぐいと腕を引き上げ、あたしの体勢を戻してくれる。
「ありがと〜おはよ」
あたしは同じ目の高さになった惟伎高にへらりと笑いかけた。
「おはよ、じゃねェよ・・・安静にしとけって言ったァろォが!」
「わー!」
けれど惟伎高はお気に召さなかったようで、びしばしと眉間の皺を増やすとぐいと耳をつかまれて、思いッきり叫ばれた。うーるーさい〜!
「おまえ、自分がどれくらい危ない状態だったか、わかってねェだァろ!死ぬところだったんだァぞ!俺だってダメだと思った。一月半!目が覚めなくてェな!ずっとあの世とこの世を行ったり来たりだ。本来こうして目が覚めたからってすぐ動いて良いモンじゃねェんだよ!」
あー・・・一月半も・・・道理で、足や手に力が入らない訳だわ。息も喋るだけですぐ切れるし、体中がへろっへろに衰えちゃってるのね。
前田家が燃える前、秋頃も七日ほど眠り続けたことがあったけど、それとはもう段違いの辛さだ。
「でもほら、こうして生きてる訳だし?終わりよければ全てヨシ的な?それになんにもしないでただ寝てるってのも・・・」
「いいから、なンもしねェで、ただ寝とォけ!阿呆!」
ひょいっとあたしは惟伎高に抱え上げられた。
「あー!横暴!折角ここまできたのにー!あたしがここにくるまでにどれだけ時間かかったと思ってるのよぉ〜!」
「暴れンな!ここまでってすぐそこじゃねェか!ンな距離も動けねェのに、掃除なんてしようとするンじゃねェよ!」
一頻りぎゃいぎゃい騒いで息を切らしながら、あたしはもといた布団に戻された。
「たく・・・鳥のピィのが余程大人しかったぜ?」
「飽きなくて良いでしょ?」
「口の減らねェ奴だ」
惟伎高はそう言いながら、そのまますとんとあたしの枕元に腰を下ろした。
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ