参ノ巻
死んでたまるかぁ!
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方の出?」
あたしは察してさらりと話題を変えた。
「そォだ。母がな、武蔵国あたりの出でなァ」
「武州かぁ・・・行ったことない」
「俺だってねェよ。行きたいとは思うが、如何せん遠くてなァ」
惟伎高が遠いと言うのには全面的に頷ける。ここ淡海国から武蔵国に行こうと思ったら、相州道を通って十日はかかる。寄り道しなくてこれだから、往復だと余裕を持って一月ぐらい・・・。うーん、ホント遠い。道々山賊やら追い剥ぎやらがわらわら待ち構えているであろうことを考えると、やっぱり気軽には行けないところよね。
「兄弟は?」
「二人きりだ。兄が一人。いや、異腹の兄弟は数え切れねぇほどいるが」
「あはは。佐々家だもんね」
「まぁ僧形となった今になッちゃァ、家は捨てたも同然だァがな」
「ふぅん?」
あたしは唸って目を閉じた。やっぱり、惟伎高自身に権力を求めるとか、そういう感じは全くしない。むしろ忌避している感さえある。髪のことも、そういう家とか血とかごちゃごちゃしたところとは無縁のところで、本当に約束のためだけに切ってないだけみたい。
「おまえは誰なんだろォな、ピィ?」
髪を撫でる手も、優しい声もそのままに惟伎高は言う。
「絹の寝間着を着てたかと思えば、言動は村娘そのもので。かと思えば鋭いことを言ったり、やけに内情に詳しかったりする。まさか音に聞こえる前田の姫でもあるまいし」
おっ!?おおぅ・・・今無反応だった自分を褒めてあげたい。いくら佐々家から離れて久しいとは言え、そりゃあ帯刀するぐらい用心している惟伎高のこと、噂ぐらい集めてるわよねぇ・・・。前田の瑠螺蔚姫はそれなりに有名だし、「るらい」って名前は珍しい。そりゃあ同一人物かもって一瞬は考えるわ。しかし「音に聞こえる」ってどうせあれでしょ?柴田捕まえた時の功績だけが一人歩きして、聡明かつその美しさは眩い天女の如し、とかそんなとこでしょ?それはね、絶っ対にあたし本人には結びつかないわ。あーよかった。その噂を聞いていた時はアホらしと一蹴していたけど、今なら言える。尾ひれ背びれをつけまくって噂を流してくれた人、どうもありがとう!
「俺を殺しに来た刺客にしては抜けてるし、まして土蜘蛛や波美・・・いや」
はっとして惟伎高は口を閉じた。それがあまりにもしまったと言う感じだったから、あたしは逆に気になった。
「ツチグモとかハミって、何?」
「知らなくて良い」
惟伎高にしてはお粗末な話の終わ
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