参ノ巻
死んでたまるかぁ!
3
[2/7]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
「え、ちょっと。あんた仮にも坊主でしょ?オツトメとか無いの」
「当然あるが、俺が目を離したらおまえすぐ脱走するだろう。当分はここで見張らせてもらうことにしたからな。・・・とンだお姫様を拾ッちまったもンだ」
最後は独り言のように呟いた。
えぇ〜。脱走とは人聞きの悪い!役に立ちたいと思うことのどこが悪いのよ。
あたしがむくれていると、惟伎高ははぁと息をついた。少しどきっとする。その溜息の付き方なんて本当に高彬そっくりで。そして惟伎高はちらりとあたしを見た。あたしはまたどきどきっとする。って言っても勘違いしないで欲しいんだけど、このどきっは色恋のどきっとは全然別のどきっよ。
有能らしい高彬と、佐々の頂を競う人・・・。やっぱり、色々頭の回る人なんだと思う。何を考えているのか、時折その視線はあたしを見ているようで居て素通りし、あたしを含めたもっと未来の大きなものを見ているんじゃないかとも思うようだ。
高彬もとっても凄いのよ。それは間違いない。高彬は誰よりも努力する人だ。真面目で、一本気で。そしてまた惟伎高もとってもできた人であることは、昨日少し喋っただけのあたしですらわかる。そう、二人とも凄いのだ。でも、佐々の長を二人で務めることはあり得ない。頂きで佐々を率いるのはたった一人、ひとりなのだ。前田家の本家筋は兄上とあたしの二人だけだったから、男子が家を率いるべしというこの戦国の無言の常識に擬えれば例え他に姫が何人居ようとも十割方兄上が跡を継ぐことは決まっていて、選択肢なんてないに等しかったし、そう考えると選び放題の佐々家は嬉しい悲鳴と言えば言えるのかもしれないけど、でもやっぱり掃いて捨てるほど居る息子の中からたった一人だけを選ばなきゃいけない忠政様の苦労は想像するに難くない。少なすぎるのも、多すぎるのも良くないわよね。ほどほどがイチバン。
うーん、なんかね、あたしのあくまで印象だけど・・・高彬と惟伎高、佐々の次期当主にどっちかを選びなさいって言われたら・・・惟伎高を選ぶ人が多いんじゃないかなぁ、と・・・思う。高彬の真面目さが、人によっては取っ付きにくい印象を与えてしまう事があるかもしれない。高彬は相手にあわせて媚び諂うような性格でもないし、間違っていることがあったら、「あなた、それは、違いますよ」と正直に言ってしまう。上にバカがつくほどの真面目クンなんだから。そういうところが世渡り下手だなぁ、とも思うし、いいところだとも思う。かと言ってじゃあ惟伎高が他人の顔色ばかり窺ってぺこぺこしているかって言うとそう言うことでもなくて。何て言うのかな…惟伎高はすぐ他人と打ち解けられそう。人望とでも言うのかしら、他人に頼らせる何かを持っている。
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ