第五章
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第五章
彼は大活躍だった。何とハットトリックを決めてしまった。それに周りもファンもマスコミも驚く。突然の復活にだ。
「一体何があったんだ!?」
「急に復調したぞ」
「本当にな」
「何があったんだ」
しかしだ。こう言う者もいた。
「一試合だけだろ」
「また元に戻るさ」
「もうチャクラーンは終わりだ」
「それじゃあな」
こう考える者がいるのも当然だった。彼の低迷はそこまで酷いものだったからだ。彼について楽観論だけでなく悲観論も多かった。
だがそれに対してだ。彼はだ。
それがどうなのか己で証明した。活躍し続けたのだ。
以前と同じだけ、いやそれ以上に活躍した。彼は復活したのだ。
それについて誰もが驚きを隠せなかった。それで彼に問うのだった。
「復活しましたけれど」
「一体何があったんですか?」
「あの、本当に急の復活ですけれど」
「どうしてそこまで」
「思い出したからな」
これが彼の返答だった。
「それでだ」
「思い出した!?」
「っていいますと」
「どういうことですか、それは」
「何が」
「祖国をだよ」
彼はここで気さくに笑って言った。長いトンネルを抜けたことが表情にも出ている。
「それを思い出したんだよ」
「祖国!?というと」
「我が国ですね」
「このタイですね」
「ああ、タイだ」
また笑顔で話す彼だった。
「このタイを思い出したんだよ」
「?というと」
「タイというと」
「一体?」
「それは」
「具体的に言うな」
彼はまた気さくに話した。表情も実に明るい。
「タイ料理だよ」
「それですか」
「我が国の料理」
「それをなのですね」
「美味いよ」
満面の笑顔での言葉だった。
「その美味さを思い出したんだよ」
「そういえばチャクラーンさんは」
「そうですよね」
「ずっと味気のないものばかり食べてましたね」
「健康管理ってことで」
「それがよくなかったんだな」
自分でこのことを振り返って言うのだった。
「やっぱりな」
「かえってですか」
「よくなかった」
「そうなんですか」
「まずい食い物はそれだけで人を駄目にする」
チャクラーンは言い切った。
「そうだろ?」
「そうですね。確かに」
「まずいものを食べたらそれだけで気が沈みます」
「そんなものを食べても」
「何にもなりませんよ」
「そうだよ。それにな」
チャクラーンの言葉が続く。
「自分がずっと食べてきた料理を食べるってのはな」
「いいんですね」
「それも」
「本当に忘れていたよ」
悔やむものもそこに見せる。
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