第六十四話 甲子園での胴上げその十三
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「次の年に優勝することはね」
「難しいのね」
「そうなのね」
「そう、権藤さんがお話してたことなのよ」
そうだというのだ。
「だから連続日本一は難しいって」
「そう簡単に出来ないのね」
「どのチームも」
「そう、けれど阪神にはね」
ここからは里香も切実に願っていることである、勿論琴乃達他の四人も里香と同じだけ願っていることである。
「日本一になってもね」
「来年もね」
「日本一になって欲しいのよね」
「ええ、何があっても」
例えだ、どんなことが起こってもだというのだ。
「日本一になって欲しいわ」
「だよな、やっぱり」
里香の切実な言葉を受けてだ、美優も言う。
「阪神はな」
「そうよね、来年もね」
「日本一になって欲しいよ」
美優も言うのだった、このことを。
「絶対にさ」
「そうよね、本当に」
「来年のことなんて言ったら鬼が笑うけどさ」
美優はこの言葉も出した。
「それでも気になるよな」
「今の時点でね」
「まあそれでもな」
どうかとだ、ここで試合に気を戻すと。
阪神は八回裏にソロアーチで追加点を入れた、これで三点差になった。その三点を観て琴乃はごくりと息を飲んでからこう言った。
「三点、後はこの三点をね」
「そう、守ればね」
「後はね」
「日本一よね」
「絶対にここはな」
美優もだ、九回を見据えて言った。
「九回はあの人だよな」
「ええ、ストッパーのね」
「あの人の出番よね」
「九回だし」
「だよな、あの人しかいないよ」
ストッパーの出番だというのだ、尚彼はこのリーグで防御率一点代という驚異的な成績を残してさえいる。
「最後は」
「もうトリはね」
「あの人よね」
「だよな、じゃあ」
五人はここで固唾を飲んだ、そのうえで九回を待った。その九回表にだ、五人の予想通りに彼が出て来てだった。
マウンドで肩ならしをする、その顔を見ると。
打たれる気がしない、それでだった。
五人もだ、確かな声でこう言えた。
「この回さえ抑えたら」
「三人アウトにしたら」
「それでね」
「もうよね」
「日本一」
そのフラグをだ、手に入れられるというのだ。
「八十五年以来の」
「優勝かあ」
「日本一ね」
「いよいよ」
「早くね」
胸の鼓動を何とか抑えてだ、琴乃は言った。
「そうなって欲しいよね」
「そうよね、あと少し」
「アウト三つ」
「あと三つアウトを取るだけ」
「それだけ」
こう話していく、そうして。
まずはワンアウト、ここで甲子園の観客がコールをした。
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