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万華鏡
第六十四話 甲子園での胴上げその十二

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「あと一回」
「そうね、あと一回」
「九回を抑えたら」
「日本一よ」
 悲願のそれが達成されるというのだ。
「そしてそれからね」
「ああ、来年もだよな」
 美優が琴乃の今の言葉に応える。
「ここは」
「そう、連覇よ」
「二連覇三連覇っていしていってな」
「目指せ十連覇よ」
「夢はでかいな」
「そうね。けれど夢ってあれじゃない」
 その夢についてだ、琴乃はこう言うのだった。
「大きければ大きい程ね」
「目指すかいがあるってな」
「そう言うじゃない」
「だよな、それに夢が大きいとな」
 美優はこう言った、大きな夢について。
「目指す中で努力するからな」
「いいのよね」
「ああ、だからな」
 いいとだ、美優も言う。
「連覇な、狙うべきだよ」
「阪神もね」
「よくさ、日本一になっても」
「それは出来てもね」
「連覇になるとさ」
 どうかとだ、美優がここで言うことは。
「翌年出来ないってことあるよな」
「日本一になってもね」
「というか最近連続で日本一になったチームってないよな」
「リーグ優勝は出来てもね」 
 これだけでも大変だ、だが連続日本一になるとというのだ。
「連続での日本一はね」
「ないよな」
「中日でもね」
 落合の頃の中日ドラゴンズだ、戦力と知略があったそのチームでもだというのだ。
「出来てないから」
「最後に連続で日本一になったチームって何処?」
 景子がこのことを問う。
「一体」
「確か西武で終わりじゃないの?」
 琴乃はこう答えた。
「確か」
「西武が最後なのね」
「それからなかった筈よ」
「西武の最後の連覇って」
「結構以上前よ」
 琴乃達が生まれるどころかそれぞれの両親が結婚するよりも前である場合もある、それだけ昔のことである。
「西武が無茶苦茶強かった頃よ」
「九十年代の頃よね」
「そう、八十年代からね」
 西武の長い長い黄金時代だ、この頃の西武は圧倒的ですらあった。
「あの頃の西武からはね」
「連続日本一ないのね」
「そうなのよね」
「それだけ連覇って難しいのね」
「確か権藤さんが言ってたけれど」
 里香は横浜の監督だった彼のことから話した、中日での現役時代は権藤権藤雨権藤と連投で活躍した大選手だった。
「優勝、日本一になるとね」
「何かあるの?」
「日本一にまでなって」
「自分達では余力があるつもりでもね」
 例えだ、圧倒的な勢いで日本一にまでなったとしてもだというのだ。
「力を使ってるみたいよ」
「圧勝でもなの」
「それで日本一になれても」
「そうみたい、力を使い果たしてるからね」
 その一年でだ、つまり完全燃焼してしまったというのだ。
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