第六十四話 甲子園での胴上げその十
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「今こうしてね」
「日本一ね」
「それになるのね」
「そう、なるのよ」
いよいよというのだ。
「今日ね」
「それも甲子園で」
「本拠地で」
そこでの胴上げだから尚更というのだ。
「いや、夢みたいよ」
「阪神の甲子園での日本一って」
「本当に」
「相手のはあったけれど」
甲子園で敵が目の前で胴上げをするという屈辱もあった、阪神の歴史は栄光だけでなく屈辱も多い。
「それがね」
「今度こそはね」
「いや、もう何が起こるか」
「楽しみだよな」
五人共完全に日本一になると思っていた、そしてだった。
その喜びの中でだ、酒を飲み焼き鳥を食う。するとその味は。
「うわ、何かね」
「そうよね、さっきよりもね」
「ずっと美味しい」
「お酒も焼き鳥も」
「ホームランの後は」
こう言うのだった、焼酎を飲み焼き鳥を食べて。
特にだ、焼酎がだった。琴乃はその焼酎をグラスで飲みながらこんなことも言葉として出したのであった。
「勝利の美酒?」
「まだ日本一じゃないわよ」
胴上げはだ、まだだと言う里香だった。
「だからまだそれにはならないわ」
「そうよね、じゃあ」
「喜びの美酒よ」
今はそれだというのだ。
「とりあえずはそうなるわ」
「喜びのなのね」
「試合が終わるまではね」
試合は確かに大きく阪神に流れが傾いた、しかしそれでもまだ終わってはいない。それで今はまだ、というのだ。
「そうなるわ」
「そういうことね」
「そう、じゃあ今は」
「うん、喜びの美酒をね」
「飲みましょう」
里香は笑顔で言う、そして。
皆それぞれその喜びの酒を飲んでいく。そうしながら阪神に一気に傾いた試合を観ていく。試合はその満塁ホームランで完全に勢い付いた阪神の先発ピッチャーが好投し。
終盤まで進んだ、その終盤もだった。
順調に進む、しかし八回に二点を失った。するとベンチが動いた。
「後は、だよな」
「ええ、もう八回だし」
彩夏はマウンドに集まる縦縞のユニフォームを観つつ美優に応える。
「もうね」
「交代だよな」
「あとは中継ぎ陣で」
「九回にはストッパーだよな」
「阪神の中継ぎ抑えだとね」
それなら、というのだ。
「大丈夫よ」
「だよな、尋常じゃねえからな」
「ええ。ただ昔からね」
彩夏もだ、阪神の過去を思い出しつつ話す。
「阪神の中継ぎ抑えって投手陣の中で一番いいわよね」
「だよな、中継ぎ課とかな」
美優も言う、阪神の暗黒時代野村克也が監督をしていた時の中継ぎ陣の呼び名だ。それぞれ個性派のピッチャーが揃っていた。
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