高校2年
第三十話 決め球
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第三十話
「あいつら、全然通用しとーばい」
「やな。あの海洋とこんな接戦しよるけんな。」
三龍応援席では、引退した3年生が口々に語る。
回は5回を終わって、今はグランド整備中。三龍対水面海洋の準決勝は、3回に一点ずつを取り合った後、お互いチャンスはあったものの後一本が出ず、1-1の同点のまま前半戦を折り返した。
「え?でも俺ら5回の時点では5-0で勝ちよったで?」
夏の大会では1番センターを打っていた柴田が、おどけながら言う。
「まぁありゃ、城ヶ島から取った点やないけんな〜」
「そうそう、結局城ヶ島にはしっかり完封されたけん、あっちがハンデくれたようなもんやけん」
「おいおいやめーや、あの打たれた奴も今日ここ居るかもしれんけん!」
「確かに!絡まれたら怖いもんな〜」
同じ3年生が夏の大会を“思い出”として語る様子を見て、主将だった林は少し複雑な気分になった。自分はまだ話したくもない。今でも、あの試合に勝てていたらと思う。もちろん、あの試合に勝ったからと言って甲子園が決まっていた訳ではないし、次の試合であっさり負けていたのかもしれないのだが、そんな事はどうでも良い。海洋に勝ちたかった。名のある強豪に勝って強さを証明したかった。負けた思い出より勝った思い出が欲しいのは、ごくごく自然の事だろう。林はぎゅっと拳を握った。
勝てよ、お前ら。
「サタデーナイトいくでお前らー!声出してこーでー!」
ベンチ外の現役部員に混じって、夏の大会の時のように応援をリードする牧野が声を上げた。
林もメガホンを手に取り、大声を出す。
「「「さぁ行こうぜどこまでも
走りだせ 走りだせ
輝く俺たちの誇り 三龍 三龍
うぉ〜お〜お〜お〜
うぉ〜お〜お〜お〜」」」
ーーーーーーーーーーーーーーー
<6回の表、水面海洋高校の攻撃は2番セカンド安藤君>
グランド整備のインターバルが明け、試合が再開される。6回の海洋の攻撃は2番の安藤から。4回、5回と海洋打線は1人ずつランナーを出していた。
(ボール球になるスライダーを2巡目からしっかり見てくるようになったのはさすが海洋だよなぁ。一試合かけてもクルクル回り続けるチームもあるのに。)
宮園は気を引き締める。この回が大事だ。夏の大会では、グランド整備明けの6回に反撃の糸口を掴ませてしまった。この回は2番、3番と左打者が続き、4番には主砲の江藤も控えている。
(美濃部の決め球がスライダーってのはもう十分分かっただろう。ここからは違う球も混ぜていく。)
2番の安藤を追い込んだ後、宮園はそのボールのサインを出した。美濃部は頷き、大きく振りかぶって投げる。
(真っ直ぐ!)
少し甘めに入
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