第一物語・後半-日来独立編-
第七十一章 竜神《3》
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。だが、素直に憎めない仲間に対する懐の温かさ。
世界の何処においても存在するその温かさは、かえって他人との隔たりをつくってしまった。
それが今の世界。
自国のために他国を犠牲にする。
善か悪か。考えは人それぞれだろう。
築かれた隔たりを無くすため、セーランという一人の人族は立ち上がった。
日来を存続させるということと同時に行う、世界へ対する訴え。
とても大きな、想像では計り知れない程の大事。
手を取ることを忘れた世界に少しでも、手を取り合うことの意味を解らせるために。
「「今は共に戦おうか」」
言葉を重ねた。
一文字もずれない言葉の重なりは、セーランや繁真、その場にいた清継にどう響いただろうか。
感じる前に三人は自身がやるべきことに意識を向けていたため、あまり深くは捉えなかったことは確かだ。
ただ、無意識の内に心中ではその言葉をしっかりと覚えていた。もうお互い口にすることはないであろうことだが。
状況は変わらず、何かしら手を打たないと場は動かないことは三人は解っている。
どうするかと思考を働かせるが、これといった策は出ないでいた。一歩間違えれば危険な策が多々あり、最善の方法が既に危険なものばかり。
沈黙が生まれると思っていた繁真と清継だったが、ここで日来の長であるセーランが動いた。
さらっととんでもないことを言って。
「黄森長を餌に使ってもいいか」
雷に打たれたかのような衝撃。
何を言っている。二人の言葉を代弁するならばこれが当てはまっている。
一瞬遅れて清継は反応し、
「ば、馬鹿ですか貴方!? 人の長をなんだと思っているんですか!」
「仲間からよく馬鹿長呼ばわりされてるからなあ、きっとそうなんだろうな」
「頭おかしいんじゃないんですか?」
「笑いながら言うのか! 満面の笑みが眩しいけど、結構どす黒い何かを感じるぞ!」
清継がセーランへと向ける笑顔は、誰が見ても相手を軽蔑の意味が込められたものだ。
長を目の前にしてその態度は凄いと感じたセーラン。
黄森恐るべし、てとこだな。日来の連中なんか長である俺に仕事押し付けるし、買い物頼んだり直で悪口言われるわ、俺の好みな商品宣伝してついつい買っちゃうから金巻き取られるわで。……あれ? これ、かなりハードなイジメじゃね? 身内からの方が俺に対する接し方酷くね? 何これ、振り替えるのすげて悲しくなるんだけど…………泣きたい……。
急に左手で両目を隠し、天を見上げる日来の長を清継は不思議そうな目で見詰めた。
一区切り打つように繁真がわざとらしい咳払いをする。
「あまり呑気なこともやってられない」
言葉の後。大きく大気が揺れた。
爆風によるものだ。
原因は何か、それはすぐに分かる。
竜神による竜口砲が
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