第16話:ただ自分を超えるために(1)
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り後ろから森島に抱きしめられた逢は、手をバタバタさせて逃げだそうとする。逢に頬擦りする森島の目は、可愛いらしいものや面白そうなものを見つけた時に見せる光り輝く星みたいなものが見えた気がした。こうなった森島は、抵抗したところで並の力では引き離せないだろう。
「もう……こら、はるか。いたいけな小学生をいじめないの」
スクールの後輩の面倒から解放された響が、逢に抱きつく森島に注意を入れる。どうやら気持ちを立て直したらしい。響の声を聞いた森島は、それでも離したくはないと不満そうな顔を浮かべる。
「え〜、でもスッゴクかわいいのよ? ひびき、この子飼っちゃダメ?」
「飼っちゃダメ。あと1年間弱で水泳部に入るんだから、それまで待ちなさい」
「む〜、ひびきちゃんの意地悪……」
まるで、駄々っ子が近くで見つけたカワイイ子猫を拾って、母親が飼ってはダメと言っているような光景であった。
森島と響は、原作では大の仲良しであり、この世界でもそれは引き継いでいるようであった。正直俺の存在がどれだけ影響するのかと内心焦っていたのだが、あまり変化が無くて本心からほっとしたものだ。水泳部の活動でも、森島、響、知子の三人は水泳部に関する話を始め、学校生活、最近見た恐竜映画、ビーイングブームなど色々な話に花を咲かせていた。
俺も森島の強引な誘いでその姦しい輪に混じり、彼女らのガールズトークを聞くことが頻繁にあった。年頃の女の子三人のパワーに、俺はたじろがない時が無く、たまに話を振られたら返すくらいであった。
ただ、森島が「みんなの初恋っていつなの?」という話題を振られた時は一気にその場の姦しさが嘘のように静かになったことがあった。知子は、頬を赤くして何にも応えようとせず、響も頬を赤に染めた微笑を称えたまま黙っていた。異様な緊張感で俺は口を開けず、森島だけが「おりょ?みんなどうかしたの?」と小鳥が首をかしげるように不思議そうな態度を取っていた。
それはともかく、知子は「はるちゃん」、響は「はるか」と森島を呼ぶようになり、森島も「ともちゃん」「ひびきちゃん」とお互い愛称で呼び合うようになった。
森島は俺についても愛称で呼んでほしいと言ったが、また要らぬ誤解を巻き起こしたくないと思って「森島」と呼ばせてほしいと頼んだ。残念そうな顔をしていたが、必死に頼み込んで何とか納得させた。
「何でもいいですから、離してください!」
「そうね、はるか。逢を離してあげて」
抱きしめていた腕を逢から離すと、逢はすぐさま俺の背後に隠れる。
「あ〜あ、逃げられちゃった」
「逃がしてあげなさい」
「むう……逢ちゃん。お姉さん、一年待ってるからね……」
一年待
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