第16話:ただ自分を超えるために(1)
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そうね……いつまでも逢に頼りっぱなしというのも悪いし」
「逢?」
「そう、今は逢が主に小さい子の引率をしているのよ。中学生の私は忙しいから、そうそう役割を振るわけにはいかないし。ほら、そこにいるわよ」
響の指の先には、ジャージを着た逢が小さい子達の泳ぎ方の一生懸命指導している姿があった。アッププールの1つのコースを往復している子達の泳ぎを見て、口を動かして何かを伝えているようだ。あんなに小さかったのにきちんとお姉さんが出来るようになったのだなぁ、時間というものは凄いな、と何か感慨深くなった。
逢の姿とまだ表情に元気の無い響を見て何かピンときて、
「なあ、ちょっと逢のところに行ってみようぜ」
「え……ちょ、ちょっと」
と、響の手を牽いて逢の方に向かった。こんなところで世間話を細々やるよりも、場所を変えて違う人と話したほうが気分転換しやすいしな。
響は少し批難の声を挙げたが、別に抵抗は無く、大人しく俺に手を引っ張られながら逢のところへ向かう。
「よう、レースでは久々だな」
と、俺は後ろから逢に声を掛ける。ビックリしてこちらを見た逢は、俺達の顔を見てぱあっと顔を輝かせる。子ども達に、ちょっと待っててね、と断ってから俺達の方へと早足で掛けてくる。
「私に会いに来てくれたの!」
「そいつもあるな、あとこいつがしょぼくれちまったから少し気分転換させにちょっと、な」
しょぼくれていた本人に目線を向けると、罰の悪そうに視線を逸らして頬を染める。逢も先ほどの光景を見ていたのか、少し苦笑していた。
「あー……あの子。元気な良い子なんだけど、ちょっと腕白で周りに合わせられないところがあるから……コーチも大変そうだったし」
「そうか」
と、俺達は先ほどの子とコーチが話をしている様子を遠めで見る。コーチが口を動かして、子どもの方は何も動かない。
(軽いお説教かな。まぁ少し叱られたほうがあの子の将来のためにもなるし、いいことだな)
と俺はおっさんのような事を考えた。
「まあ、あの子は例外として……それでも、お前はしっかりお姉ちゃんをできるようになったんだな」
「本当? 本当にそう思ってる!?」
「お前に嘘ついてどうするんだよ」
「やったあ!」
と、元気良く飛び上がる。たまに思うが、原作のクールさがこうすると微塵も感じられない。本来はクールと言うよりかは、感情に正直な性格なのかな、とさえ思ってしまう。俺にとっては、これは嬉しいことなのかどうかは分からないけど。
子ども達の方に目を向けると、そのうちの白いゴムキャップを被った一人が俺達のほうに口を開いて何かを訴えて
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