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アマガミという現実を楽しもう!
第16話:ただ自分を超えるために(1)
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が見える。


(相変わらず、響は子どものお守りは苦手なんだな)


 と苦笑して、その様子を眺めていた。その子どもは相当なお調子者なのだろうか、聞き取れないが何かを叫んでいて、響は手を付けられず困っているようだった。


「響は、やはり子どもの面倒がまだ得意じゃないそうですね」
「小五の頃、逢の面倒を見終えた後に任せた一年生の子どもが相当な悪ガキだったからな。それ以来、ああいう理が通じないタイプが苦手意識を持ってしまったみたいでな。何とか克服しようと頑張ってはいるんだが、中々順調にはいかないなようだ」


 苦笑いをしながらコーチが言う。確かに逢はとても良い子だったが、その一年後に担当した男の子は暴れん坊で、見る方は堪ったものではなかった。両親も我が子のやる事にケチをつけるな、と仰る相当変わった方々だった。三ヶ月ほど辛抱強くコーチと俺と響が一緒に面倒を見ていたがどうにも態度は変わらず、残念ながら退会してもらった子がいた。あの子の言動は親の育て方に問題があったんだ、気にするなよ、と俺は響には言ったんだが、相当あれで苦手意識を持ってしまったんだよな。あれは当時、本当に腹に立ったもんだ。
 助け舟を出すか、という事で俺は動き出し騒ぎ出す彼をなだめに掛かる。これが初試合で緊張と興奮のしすぎでつい大声を出したくなったことは、判別できた言葉と雰囲気から伝わってきた。
 少し強めの言葉を出して、興奮した様子を抑えた上でなるべく穏かな声で喋り、その少年選手を宥める。少年が落ち着きを持ったところで、響に謝るように諭し、コーチの元に戻させた。


「ありがとう拓君。助かったわ」


ほっとした様子の響の顔が見えた。


「いいさ。それより響、おまえ相変わらず子どもが苦手なんだな」
「う……ごめんなさい」


 俺はほっとした響を、からかうような口調で言う。そんな俺の言葉に、痛い所を突かれたのか、響は頬を染めて言葉に詰まり俺に謝る。それとも自分の失態を見られたことが恥ずかしくなったのか、再び沈黙。まったく、急展開や合理的でないことに弱いのは相変わらずだな、と数年前の響の様子と較べながら思った。
 響の顔をもう一度見る。響の顔が、沈んだまま浮き上がってこなかった。俺の言葉を冗談だと受け取ってなかったように感じられ、俺はやりすぎたかなと思ってフォローを入れる。こいつが真面目過ぎることを、俺はすっかり忘れていた。


「すまん、冗談だ。だから別に謝らなくてもいいさ。それにな、ゆっくり慣れれば何とかなる。大丈夫だ」


 響の頭に手を置く。落ち込んだ仲間を励ますときには頭に手をそっと置いて少し撫でる、昔から俺の癖だ。響の沈んだ感情がやっと浮き上がってきたのか、徐々に顔に赤みを帯び始め、口元が綻び始める。



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