Episode25:龍舜
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鋼は『疲れた早く寝たい』との理由で帰宅している。
どうやら、今回のテロ行為を扇動した首謀者である剣道部の『司甲』も、先程風紀委員の辰巳鋼太郎と沢木碧によって拘束されたようだが、そちらはまだ聴取できる状態ではないと判断され、後回しとなった。
「壬生、それは本当か?」
紗耶香から、今回の犯行の準備期間からの経緯を聞いて、摩利は珍しく狼狽したような声を発した。
どうやらブランシュは紗耶香が入学する前から、恐らくは司甲が入学した時から今日のために相当に入念な準備をしてきたようだ。真由美たちはそのことに驚きを覚えるが、摩利は別の場所で驚いていた。
摩利の問いに、紗耶香はどこか吹っ切れた表情で答えた。
「今にして思えば、あたしは中学時代『剣道小町』なんて言われて、いい気になっていたんだと思います。
だから入学してすぐの、剣術部の新入生向け演武で渡辺先輩の見事な魔法剣技を見て、一手のご指導をお願いした時、すげなくあしらわれてしまったのがすごくショックで……
相手にしてもらえなかったのはきっと、あたしが二科生だから、そう思ったらとてもやるせなくなって…」
「チョット…チョット待て。
去年の勧誘週間というと、あたしが剣術部の跳ね上がりに灸を据えてやった時のことだな?
その時のことは覚えている。
お前に練習相手を申し込まれたことも忘れていない。
だがあたしは、お前をすげなくあしらったりしていないぞ?」
それは、僅かな食い違い。
「傷つけた側に傷の痛みが分からないなんてら、よくあることです」
エリカの言う通りに、そう割り切ってしまうことは簡単にできる。だが、隼人はその少しの食い違いに強烈な違和感を覚えた。
それはどうやら達也も同じだったようで、
「エリカ、少し黙っていろ」
「なに?達也くんは渡辺先輩の味方なの?」
「だから少し黙って聞いていろ。非難も論評も、話を聞き終わってからだ」
達也に厳しく叱責され、エリカは渋々ながらも黙った。
気まずい沈黙が続く中、隼人は必死に記憶の中を漁っていた。
「先輩は、あたしでは相手にならないから無駄だ、自分に相応しい相手を選べ、と仰って……
高校に入ってすぐ、憧れた先輩にそんな風に言われて…」
「待て…いや、待て。それは誤解だ、壬生」
「えっ?」
「あたしは確か、あの時こう言ったんだ。
----すまないが、あたしの腕では到底、お前の相手は務まらないから、お前に無駄な時間を過ごさせてしまうことになる。それより、お前の腕に見合う相手と稽古してくれ----とな。
違うか?」
「え、あの……そう、いえば…」
「大体、あたしがお前に向かって『相手にならない』なんて言うはずがない。剣の腕はあの頃からお前の方が上だったんだから」
紗耶
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