Episode25:龍舜
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リと笑みを濃くすると、彼は徐に懐からワイヤーを取り出し手首に巻いた。
「…増援、ねぇ」
騒がしくなってきた実技棟の外へチラリと視線を向けると、扉を挟んだ向こう側に数十人のブランシュメンバーの姿を見つけた。
「鋼」
「おっけー、任せなって」
鋼もその存在に気づいていたのだろう。特に言葉を交わすことなく二人は自分らのやるべきことを確認した。
「行くぞ…!」
「ササっと終わらせる!」
雷帝を発動した隼人が舜華へと、数瞬遅れて鋼が侵入してきたブランシュメンバー達へと駆け出す。戦端が開かれたのは、全くの同時だった。
「ハァッ!」
剣戟を回避して繰り出された回し蹴りを、舜華はギリギリの所で回避した。もし当たれば一撃で致命傷になり得る威力を孕んだ蹴りに、冷や汗が流れる。
流れるような拳のラッシュを時折掠りながらも確実に躱していきながら、舜華は敵である少年を観察する。
非戦闘時のおめでたい思考回路はどこにいったのか、舜華は少年の持つパワー・スピード共に自分を上回っていることを一切の感情を挟まずに機械的に理解した。致命傷を与えられずに焦る隼人とは裏腹に、段々と、『龍舜華』という存在が対隼人に適応していく。
「…っ!」
閃いた白刃の一閃を、隼人は床に転がることで回避した。立ち上がった瞬間に突き込まれる切っ先を紙一重で躱して、隼人は敵が自分のスピードに追いついてきたことを悟る。それに伴って、対峙している女の雰囲気が変わったことにも気づいた。
「ふむ…」
短い呟きを舜華が漏らしたと同時に、隼人はその場から飛び退いた。直後を、スピードを上乗せした舜華の刀が地面を粉々に砕く。気づくのが一瞬でも遅れていたら、恐らく自分も無残に破壊された地面のようになっていただろうことを理解して、隼人は歯噛みした。
「俺が出てくるのは久し振りだな……」
「…は?」
目の前にいた女がボソリと呟いた一言は、隼人には理解し難いことだった。
『俺』?
豹変した雰囲気といい、一人称といい。先ほどまでの間抜け面はどこへいったのか。今の龍舜華の表情は歴戦の戦士のソレだった。
「アンタ…一体誰だ?」
低い声で隼人が尋ねる。一瞬でも隙を見せたら返答の最中でもその首をへし折れるように体勢を作るが、果てしてそのような隙を目の前の女は見せなかった。
「俺の名は龍舜秦。この肉体のもう一人の持ち主だ」
「……二重人格ということか?」
「有り体に言えばそうなるな。実際は、もう少し複雑だが」
正直言って、隼人はそんなことに興味はなかった。ただ、敵の身のこなしを窺う時間が欲しかったのだ。
そして、舌打ちをし
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