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セニョール
第五章
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第五章

「それじゃあ僕だけが特別じゃない」
「だからか?」
「嫌なのか」
「だから。野球は皆でやるものだよ」
 ここでもこう言うのであった。
「だから僕だけっていうのは」
「じゃあどうすればいいんだ?」
「それじゃあな」
「特別扱いが駄目なら」
「皆だよ」
 サンターナは言った。
「皆を皆で胴上げしようよ」
「おいおい、俺達全員か!?」
「全員を胴上げするってか」
「まさか」
「だから。野球は皆でするものだよ」
 ここでもこう話すのだった。
「だからだよ」
「それでか」
「それでなんだな」
「僕だけじゃ駄目だよ。だからね」
 こう話してなのだった。彼は自分だけが胴上げされることを断った。そうして皆でお互いを讃えながら日本一の美酒を楽しむのだった。
 翌年もだ。彼は活躍した。その明るさでもだ。
 その翌年もそれからもだ。チームは何度も日本一になりまさに黄金時代だった。彼は明らかにチームの中心にいたのだった。
 時にはだ。球界において忌み嫌われている自称球界の盟主に大金を積まれたこともあった。その球団の御用新聞や御用芸能人達がこぞって言った。
「サンターナはうちに来るべきだよ」
「ああ、もう契約は決まったな」
「うちの黄金時代がまたはじまるな」
「よし、これで来年は優勝だ」
 まだ決まっていないうちからだ。彼等は書いて言っていく。
「さて、複数年契約で」
「一年辺り五億」
「絶対に来るよな」
「ああ、来ない筈がない」
 勝手にこう言っていた。そして彼のチームのファン達は。
 不安に苛まれながらだ。こう話すのだった。
「大丈夫だよな」
「ああ、サンターナならな」
「断るよ、あんな話」
「だよな、絶対に」
「信じような」
 こうは言っても弱気だった。やはり金の力は強いのではないかと思っていた。彼等の劣勢は誰が見ても明らかだった。残念なことにだ。
 しかしサンターナはだ。はっきりとこう言ったのだった。
「ずっと今のチームで野球をやるよ」
 満面の笑顔での言葉だった。
「ずっとね。やるよ」
 それを聞いてだ。提灯持ち達が喚きだした。
「いや、そんな筈がない!」
「何でうちに来ないんだ!?」
「うちは球界の盟主だぞ!」
「それに大金も積まれてるのに」
「一生かかっても使いきれないだけの金なのに」
「御金の問題じゃないから」
 これもサンターナの言葉だった。
「そんなの。何の意味があるのかな」
「金に興味がない!?」
「まさか、そんな」
「そんな人間がいるのか!?」
「痩せ我慢か!?」
「何か」
「痩せ我慢じゃないよ」
 サンターナはこれも否定した。
「だって。今のチームもファンの大好きだから」
 こう言うのであった。
「だからずっと野球し
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