第一部 vs.まもの!
第17話 ねえ、もしも……。
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ん中には、腰ほどの高さの台座があった。示し合わせたようにちょうど三つ、橙色の玉が安置されている。
手に取れば仄かに温かい。
「文献にあった通りよ。間違いないわ」
三人は無言で玉をためつすがめつした。
「……何つーかまあ、手に入れちまえば呆気ないよな」
ウェルドはディアスを見る。
彼は目を伏せ、何か難しげな様子で考え込んでいる様子だった。
「おい、どした?」
声をかけると、びくりと肩を震わせた。いや、と彼は小声で答える。
「……何でもない。気にするな」
「じゃあ、時の行路図が使える場所まで戻りましょ。帰りにまたあの魔物の部屋が出て来なければいいけど……」
「悪い想像ばっかしなさんなって。だいじょーぶだいじょーぶ」
と、何の根拠もない事を言いながら、ウェルドは部屋の出入り口に戻っていく。ノエルは早くこの場から立ち去りたくて仕方なかった。
聞くところによると、前回狂戦士化したフォールトとか言う男はこの第一神殿最奥部で紫の剣に遭ったのだ。
ねえ、もし狂戦士発生の間隔がこれまで二年に一度だったとしても、その統計上の数字が自分たちの身の安全を保障する事にはならないわ。
鼓動が早くなっていく。緊張で顔が熱い。ノエルは汗をかいていた。汗をかいても、体は寒い。嫌な寒気だった。
ねえ、もしも、恐ろしい物がこの先にあったら?
さっきの魔物なんかより、もっと忌まわしいものが。
「おー! やっぱ帰りは違う部屋になってんだなぁ」
扉を一つ潜った先で、ウェルドが能天気に声をあげた。
「すげー広いし、この部屋何角形なんだろうな。一、二、三、四……」
広い部屋の中央には、太陽の宝玉を載せていたのと同じ台座があった。ノエルは興味をひかれ、台座に二歩三歩、歩み寄る。
光が台座の上に浮いた。
何だろう。
ノエルはディアスかウェルドを呼ぼうとし――体が動かない事に気付いた。
まるきり硬直してしまっていた。鎖で絡めとられたように。
声が出ない。
他の二人が何かを話しているのではないか、耳を澄ませようとしたが、それすらできなかった。
台座の上に現れた物。
それはうねる触手を持つ、三本の、紫の剣だった。
どうして。
ノエルは問いかけようとする。後ずさろうとする。
けれど喋れない。
動けない。
目を逸らせない。
急激に力が抜け、その場に跪いた。
ノエルは叫ぶ。心の中で叫ぶ。
助けて! クムラン先生、助けて!
白い光に思考が侵食されていく。
最後の最後に、ノエルは恐ろしい事実に思い当たった。
トラップが、魔法が、思念が具現化されたものならば。遺跡に思念を具現化する力があるのなら。
そして今、紫の剣の事を強く思い、強く恐れていたのが、三人の中で自分だったな
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