第六十三話 第三試合その十二
[1/2]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
「仏様にお祈りするか」
「仏様にもなの」
「お祈りするのね」
「ああ、そうするか?」
美優は数珠をさらに二つ出して来てだ、景子と彩夏に応えた。
「今すぐにでも」
「仏様にもって」
「どの仏様?」
「そうだな、お釈迦さんか?」
釈迦如来だ、仏教の開祖であるゴータマ=シッダルタである。
「あの仏さんにするか」
「お釈迦様って試合勝たせてくれるの?」
「戦勝祈願だったの?」
「偉い仏さんだから話を聞いてくれるだろ」
まさに藁にすがる様に言う美優だった。
「阪神を勝たせてくれって」
「ううん、それじゃあ?」
「お釈迦さんにも?」
「とにかく今はな」
仏にも頼もうと言う美優だった、そうした話をしてだった。
景子と彩夏も数珠を取った、そして。
琴乃と里香もだ、顔を見合わせてだった。二人で美優に言った。
「じゃあ私達もね」
「数珠貰える?」
「神様だけじゃなくて仏様にもお祈りしたらね」
「余計にいいかも」
「だろ?それじゃあな」
美優も応えてだ、そのうえで。
二人の分の数珠も出してだ、こう言うのだった。
「はい、これな」
「有り難う、それじゃあね」
「私達もね」
「仏様でまだ足りなかったらな」
美優は真剣そのものの顔でさらに言う。
「キリスト教の神様も追加しような」
「今度は十字架ね」
「そちらね」
「あらゆる神様仏様にお祈りしてな」
最早神仏の総動員だった。
「阪神勝たせてもらわないとな」
「そうよね、こうなったら」
「運を少しでもね」
四人も言う、とにかく今はだった。
阪神のことで必死だった、そして。
そのバッターへの三球目、ワンストライクワンボールから。
一球投げられた、三十センチは落ちるフォークを。
バッターは打った、するとフォークを綺麗にすくい上げて。
一直線に飛び風に乗った、ホームからセンターへの。しかもその風は急に強くなり勢いのあるボールを運び。
ボールはバックスクリーンを直撃した、その瞬間球場は静まり返り。
その直後三塁側で大歓声が起こった、一塁側からは落胆の声が。
琴乃達もそれを観ている、琴乃が言った。
「逆転、よね」
「うん、そうよね」
「間違いなくな」
景子と美優も興奮を抑えられずに言う。
「今仏様にお祈りしようと思ったら」
「その瞬間にだったな」
「まさかのね」
「逆転スリーランだよな」
「これでね」
「一気にね」
「逆転してくれたな」
「嘘みたい」
琴乃は呆然として声を出した。
「こんなことって」
「頬っぺた抓ってくれる?」
彩夏もこんなことを言う、バッターは満面の笑顔でガッツポーズをしながらそのうえでダイアモンドを回っている。
「ちょっとね」
「自分で抓ってみたら
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ