第六十三話 第三試合その七
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「普通ボールって投げるまでに決めてよね」
「そうよね」
里香も信じられないといった顔で話していく、このカーブを咄嗟にウエストに切り替えて凌いだ江夏の投球のことは。
「有り得ないわよね」
「ええ、出来るのかしら」
「けれど江夏さんはね」
それをしてなのね」
「投げたの」
そうしたというのだ。
「出来たみたいなの」
「それが信じられないけれど」
「実際に江夏さんはしたから」
「凄いわね」
「まあとにかくカープもね」
「第三戦から変わったから」
「そう、このシリーズでもね」
話がそこに戻る、里香は彩夏にも話していく。
「今日よ」
「今日勝てるかどうかなのね」
「それ次第よ」
この試合で勝てるかどうかだというのだ。
「第一試合の流れを引き戻してね」
「いけるかどうかがかかってるのね」
「そう思うわ、私は」
里香は今は四人に自分の考えを述べた。
「ここで勝って欲しいわね」
「私お祈りしてきたけれど」
琴乃はここで不安そうにこの話を出した。
「一昨日のことだけれど」
「あっ、私もその日によ」
まずは里香が言ってきた。
「夜にね」
「里香ちゃんもだったの」
「うん、阪神の日本一をお願いしたのよね」
「そうなの、部活の後でね」
「私試合を観終わってね」
「それからだったのね」
「そうなの、負けたから余計に」
阪神の日本一を願ってだ、そのうえでどうしてもと思いあえてそうしたというのである。
「それでそうしたの」
「そうだったのね」
「そうなの」
「私も、昨日の放課後ね」
「あたしは夜な」
「私も。ちょっと今日の朝に」
景子と美優、それに彩夏もだった。
「やっぱり日本一になって欲しくて」
「神社でお願いしてきたよ」
「そうしてきたの」
「五人共なのね」
琴乃はそう聞いてだ、思わず笑って言うのだった。
「皆阪神に勝って欲しいのね」
「ファンだからね」
景子はこのことを理由にして琴乃に答えた。
「やっぱりそれだったら」
「私達全員がそうするなんて」
「うちの神社にも今一杯来てるわよ、お参りにね」
「あっ、そうなの」
「うちのご利益は戦勝祈願じゃないけれどね」
「スポーツでもよね」
「そう、違うけれど」
それでもだ、神社ならばだというのだ。
「それでも知ってか知らずかお願いに来てる人がいるわよ」
「何か皆なのね」
「それだけここも阪神ファンが多いのよ」
「成程ね、そういうことね」
「お願い通りになればいいわね」
景子は自分もお願いをしたこともありこう言った。
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