第三章
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第三章
そしてチームが負けている時にはだ。グラウンドでこう言うのだった。
「大丈夫だよ!」
「大丈夫ってな」
「今負けてるんだぞ」
「それで大丈夫ってな」
「ないだろ」
「これから逆転だよ」
しかし彼はこう言うのである。明るい顔で」
「そうしていこうよ」
「四点差だぞ」
「それで七回だぞ」
「向こうもそろそろ守護神出すんだ」
「それで逆転ってな」
「難しいだろ」
「いいや、大丈夫だよ」
しかし彼はまだ言う。
「あと三回もあるじゃないか」
イニングのことから話すのだった。
「それだと充分だよ」
「いけるっていうのかよ」
「三回もあったら」
「それで」
「そう、いけるよ」
また言う彼だった。
「だから諦めないでいこうよ」
「まあそこまで言うのならな」
「やるか」
「そうだよな」
ナインもだ。彼の言葉に頷けるものがあった。そうしてであった。
八回になり相手チームのエラーと四球が重なり満塁の場面となった。ここでサンターナだった。
彼はだ。ここでだ。
何と三塁打を放ったのだ。勿論走者一掃である。
それを見てだ。ナインも沸き立った。
「お、おいやったぞ!」
「ここで打つか!」
「あいつやってくれたよ」
「ああ、あと一点だ」
「たった一点だ!」
ベンチの雰囲気がこれで一変した。
四点と一店では全く違う。そしてだ。
サンターナもだ。三塁から彼等に言うのであった。
「僕やったよ!あとは!」
「ああ、任せろ!」
「御前をホームに返すからな!」
「それで同点だ!そして」
それからだった。それからもあった。
「逆転だ!」
「勝つぞ!」
「絶対に!」
これまではこのチームは実は負けるとすぐに諦めるところがあった。次の試合で勝てばいい、よく言えば割り切っており悪く言えば闘志がなかった。強くともそうした機械的なチームであった。
だが今は違った。彼等は人間として野球をしていた。
そしてだ。バッターボックスにだ。
主砲の石居が入る。四番ファーストである。彼は三塁にいるサンターナに対して告げた。
「おい、サンターナ!」
「うん、石居!」
二人は明るい顔でやり取りをする。
「絶対に返すからな!」
「待ってるよ!」
サンターナは大きな動作で彼に応える。最早チームは押せ押せであった。
石居もだ。彼も打った。
ヒットだった。だがそれで充分だった。
三塁のサンターナはこれでホームを踏んだ。その瞬間球場の観客達もネットもだ。一気に興奮の坩堝に達したのだった。
「同点だ!」
「四点差が一気にな!」
「あとは逆転だ!」
「やれ!やれ!」
「勝てるぞ!」
そして実際にだ。チームはここからも点を入れて勝った。見事な逆転勝ち
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