第一章
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第一章
犬の怖いもの
ワラビは大きい。とにかく大きい犬だ。
ブロンドの巻いている毛が全身を覆い目さえあまり見えない。これで小さければ何処にでもいる感じの子犬だが生憎大きい。何でも原産地のフランスでは軍用犬にも使われている種類の犬だという。
雌だ。そのせいか性格はかなり大人しい。身体は大きく一見すると怖そうだがとにかく大人しい犬だ。おまけにもの静かで賢く飼い主に対しても忠実だ。名犬と言ってもいい部類の犬だ。
飼い主にしても散歩の時従順なので助かっている。大型犬だけあって力は強いがそれでもだ。大人しい性格なのでとにかく助かっていた。
しかもいざとなれば飼い主を守ろうとする。怪しい気配がすればそれだけで家の外に向かって吼える。怖いものもないといった感じだ。
それはこういう時にも出るのだった。予防注射、狂犬病のそれを防ぐ為の予防注射をする時もだ。ワラビは大人しく白衣の獣医さんの前に出てだ。そうしてだ。
そこに立ったままでだ。注射を受ける。獣医さんを怖がることは全くない。ひょこひょこと歩いていって注射を受けるまで全く騒ぎはしない。そんな彼女を見て飼い主は感心することしきりだった。
ところがだ。その彼女を見てだ。飼い主は思うのだった。
「獣医さんが怖くないとなると」
それならばだ。どうかというのだ。
この犬に怖いものはないのだろうか、真剣にそう思いはじめたのだ。どんな生き物にも怖いものや弱点が存在している、そこが気になったのだ。
賢くそのうえで従順で忠実である。非常にいい犬だ。しかしその怖いものが何なのかが気になりだしたのだ。そんなことを考えるようになった。
そしてだ。そのワラビを連れて散歩をしていた。その前からだ。
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