十幕 Lost Innocence
4幕
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〈道標〉が全て揃ったことで、一行はついに〈カナンの地〉へ発つこととなった。
といっても、クランスピア社の指示でまずマクスバードへ電車で行くだけなので、大した旅路ではない――フェイにとっては。
問題は姉のエルだ。朝からずっと俯いて一言もしゃべらない。
全員で宿を後にし、ディールの街に出て、さすがにジュードが大丈夫かと問いかけたが、これにも無言で肯いただけだった。
「お姉ちゃん。行こ?」
エルは無言で首を縦に振った。困り果てているジュードに対し、フェイは「大丈夫」との意を込めて肯いた。
フェイは左手をエルに差し出し、小さく笑んだ。エルは大人しくフェイの手を取ってくれた。
「行こう。まずはマクスバードへ」
ミラが凛然と宣言したことで、フェイたちはディール駅へ向けて歩き出した。
マクスバードに着いてからフェイたちが待っていると、連絡を受けた他のメンバー――レイア、エリーゼ、アルヴィン、ガイアス、ミュゼがぱらぱらと集まっていった。
その間、フェイはずっとジュードの横にいた。ジュードはミラといたいだろうに、それを許してくれた。
小さな姉はといえば、埠頭の隅で膝を抱えて俯いていた。横には寝そべるルルと、そんなエルとルルを目を逸らさず見守るルドガー。
「事情はローエンから聞いた」
「元気出せ……って言っても無理かもだけどさ」
フェイは色のない髪を風にはためかせながら首を横に振った。
ルドガーとエルが立ち上がり、こちら側にやって来た。
ルドガーは何もなかったように、皆に集まってくれた礼を言う。ルドガーこそ、元気を出せと言われて出せない立場だろうに。
「クラン社からメールが来た。『到着を確認。〈カナンの道標〉を五芒星形に並べよ』だとさ」
「――動きが筒抜けでイヤな感じね」
ミュゼが埠頭の柱の陰に目を流しながら呟いた。
「ゴボーセー……?」
「やってみるといい。それは、エルとルドガーが集めた物だろう」
エルはルドガーと顔を見合わせてから、くちびるを引き結んで肯いた。
ルドガーが荷物から出した5つの〈道標〉をエルが受け取り、両手に抱える。エルはジュードを見上げた。
「ゴボーセーって、どういう形か教えて」
「星の形だよ。こういうの」
ジュードは指で宙に五芒星を描いた。
エルが走っていく。港の隅に五画形に置かれていく、白金の歯車の集合体。それに合わせて円状の白金の輝きが刻まれ、五画の花を作り上げる。
「ゴボーセー! 星の形!」
エルは地面を指差し、明るい声を上げた。しかしすぐ、まるで明るく振る舞った自らを恥じるように、駆け戻ってきて、ルドガーの足におでこをくっつけて俯いた。ルドガーはそ
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