世界の掟−−農家はやっぱりすごい
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「ここなら、うまい飯を食べさせてくれるな」
冥星の目標は家を出た時から既に決まっていた。この辺一帯を物色して一番大きな家に殴り込みをかけようという作戦だ。
大人であれば犯罪に等しい行為だが、子供がやればОK。子供がやれば犯罪ではない。
「ということでこんなところまで、はるばる来たわけだが」
ひどい坂道を駆け上り、その上にそびえたつ日本風の屋敷。前々から気になってはいたが、いざ目の前に来てみるとなるほど、地域一番の権力を誇っているだけのことはある。
この屋敷を見てもさほど驚かないのは、自分の住んでいた元の住処がこの屋敷以上に巨大だったからだ。
もちろんそれに伴う、陰湿さも巨大だったわけなのだが、
それはそれとて、颯爽冥星は屋敷の門までたどり着いた。ここに来るまでひどく時間がかかってしまったし、その分エネルギーを消費してしまったし、それに見合う食事が取れるのか不安ばかりだが、とにかく冥星はご飯を頂戴することに命をかけていることは皆にも伝わっただろうか。
「ご苦労」
「お疲れ様です、冥星様!」
入口には黒服を着た筋骨隆々の男二人が石像のように立っている。その男たちにねぎりの言葉を放つと冥星は優雅に門を潜り抜けた。そして待っていた女中に食事の仕度をさせ、永遠に屋敷で暮らすことになったのでした。終わり。
などという話はもちろん冥星の妄想なのであり、現実はいつも過酷なものだ。
「なんだ、この坊主は?」
「おい、離せ! 俺は食事をしに来たんだ!」
男たちに拘束され、冥星はその場で待機を命じられた。理由は勝手に門を潜ろうとしたからだ。子供とはいえ、不審者に変わりはない。羽交い絞めにされた挙句、金属探知機でくまなく凶器をもっていないか探られた。
「何してるの?」
「こ、これはお嬢様、実は不審な人物を?まえまして」
「不審……? まさか姫を付け狙っている輩じゃねぇのか?」
まさに天の采配というべきか。このまま豚箱行きだった冥星の目には、クラスメイトである少女が姿を現した。もちろんその子会うのが冥星の目的を達成するために必要な要素であった。それは冥星もわかっていたのでこんなにも早く再会をはたせたことを喜ばしく思う。
「てめぇ……やっぱり変態だったのか」
「お前に用はない。大蔵姫を出せ」
「んだこら! もう一回絞めんぞてめぇ!」
ゴリラ的な何かとはもう今日は口を聞きたくもないのでそうそうに退場してもらいたい。
だが、やはり現実は過酷だ。冥星はあっという間に胸倉を掴まれ赤い女のそばに引きずり出されてしまう。
とりあえず、お嬢様の知り合いということで、黒服の連中から解放されたというのにもっとひどい目に合わされていることに冥星は絶望すら感じる。
「お前…
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