世界の掟−−農家はやっぱりすごい
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く脆いただの子供だからだ。大蔵の名をもらっただけの、な。ふむ、しかし儂に牙を向けるその姿勢、悪くはない。今日は孫娘に免じて許してやろう、凛音よ。だが――――」
悪魔は不気味に笑った。神はなぜ、このような人間とも思えぬ所業を繰り返す者に富と権力を与え、彼らのような子供たちに凍てつくような現実を与え続けるのだろうか。
一つ目は、彼らが人類とは全く異なる因子を持っていること。
二つ目は、彼らには特別な人権が与えられていること。
三つ目は、彼らが家畜であること。
「今度は容赦せんぞ。薄汚いミュータント共よ。いや、家畜共……貴様らに与えられた人権は貴様らを保護するためにあるのではない。我々人類が貴様らを支配するために作られた法なのだ。貴様らが、一体誰のおかげで生きていられるのか、ゆめゆめ忘れるな」
冥星、姫、凛音は、ここに集う。己を縛り付ける世界という存在に対して常に違和感がある。だが、それを表に出すことはできない。そのように教育されているからだ。
まるで家畜だ、と凛音は己を哀れむ。理不尽に暴力を振るわれ、それでも主のための働く家畜。その先に一体何があるというのだろう。
まるで人形だ、と姫は自らの無力さに苛立つ。それは世界に対して、あるいは大蔵という家に対して、目の前に突き付けられた理不尽に対して……。
「――――おいおい、勘違いするなよ爺様」
この場にいて、誰よりも傍観者でありながら冥星は己の意思を貫く。
まるで彼の世界に一切の壁などないかのように、彼は真っ直ぐ臥薪を睨む。
「俺が生きていられるのは農家の皆さんのおかげだ。そして食事を作ってくれている給食のおばさんや認めたくないが明子のおかげだ。しかしだロリコン爺? お前は一体俺に何をしてくれたんだ? さっきから見ていれば自分の変態的な趣味を暴露しているただのボケ老人にしか見えないぞ? いいか? この世界ではな、爺のような働きもせずゲームばっかりしているような屑を――――ニートというんだ」
城島冥星、若干一一歳にして大蔵家に啖呵を切った瞬間だった。
後にも先にも、彼のようなとんでもないバカは現れなかった。
同時に、彼は光だった。いつか、この世界を変えてくれるのではないかという幻想を抱かかせるかのように、彼はキラキラと輝いていた。
無論、そんな気持ちはこれっぽっちも少年の心には存在しないのだけれど。
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