世界の掟−−農家はやっぱりすごい
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今わしは覆した。子供は確かに法律に守られている。こんなことが明るみに出れば、わしでさえ処刑される時代よ」
「じーさん、頭大丈夫か?」
「もちろんだとも。この大蔵臥薪、老いても耄碌はしない。なぜなら――わしには楽しみがあるからだ。こうやってお前たち屑どもを囲い、育て、弄ぶことが、何よりも若返る秘訣なのだよ」
「ちょっと! おまわりさん! 変態! 変態がいますよー!」
近くを通った警察官は冥星の声に振り向く。しかし目の前の老人を見た瞬間、一目散に自転車を反転させてしまった。この時、冥星は絶対に税金を払わないことと、警察官にだけはならないと決めた。
「では、小僧。ここで問題だ。国家とこの臥薪――どちらが偉いのだ?」
「クレイジーなじいさんだ。家のパピーほどじゃないけどな」
ルー何柴を真似たとて、この現状を打開できる術はない。目の前には子供を杖で滅多打ちにし、髪を引っ張り上げ、その痛々しい姿を愉悦感たっぷりに見下ろす老人。
それを見つめる自分自身。どちらが異常なのか。どちらも異常なのだろう。
冥星は凛音と接触したのは、昨日が初めてだ。成り行きでご飯をおごってもらい、まぁその対価として暇つぶしにつき合わされてしまったわけで。
なにもかもがいきなりすぎて、冥星には状況が把握しきれていないのだ。把握したとて、自分が傍観者であることに変わりはないのだが。
「不思議な小僧だ。この娘がどうなってもいいのか」
「う〜ん……TKGぐらいじゃなぁ……」
「なるほどな……化け物には道徳心がなかったか。これは失態、儂としたことが」
「いやいや、じいさんにだけは言われたくないわ……」
大蔵臥薪は目の前の小僧を愉快気にその鷹のような目で睨み付けた。自分という圧倒的な存在を前にして動揺を見せないことに感心しているのだ。
大蔵家は日本有数の大財閥だ。戦後の財閥解体を潜り抜け、成長し続けた財政界のトップ。金と権力を裏で牛耳り、その力は国の細部まで行き届いている。今日、我々を導いてくれる優秀な政治家たちは、この大蔵家の傀儡として動いている、などという噂もあるくらいだ。
金の大蔵、学の篠崎、力の六道――大蔵を中心とした一つヒエラルキーの形成。
この土地では、誰も逆らうことのできない人物に冥星は対峙しているのだ。
「ふん……凛音よ、素敵な友達ができてよかったな」
凛音は臥薪の言葉に反応をみせない。いや、見せることができない。短時間とはいえ、大人の力で数回に至る暴行を受けたのだ。加えて女子のそれも子供の体では到底耐えうることのできない苦痛だったのだろう。既に気絶寸前まで体が悲鳴を上げている。
「さて、次は坊主の番だが……む?」
「ご主人様……ど、どうかお慈悲を、わ、私が屋敷に入れた、です……だから、こいつは
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