世界の掟−−農家はやっぱりすごい
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付いた冥星は、では自分以外のいったい誰が凛音をメイドのようにご主人様と呼ばせているのだろうか、と疑問に思う。はっきりいってこんなメイドはいらない。
「凛音よ……面白い物を連れているな。それはなんだ」
「ク、クラスメイト、です」
「クラスメイト? なるほど……化け物同士惹かれあったか」
「そんなに褒めるな。ところで、化けじいさんや、ご飯はまだかいな?」
「!? お、お前、あ、謝んな、ほら、はやく」
冥星のふざけた態度に老人はギロリとした目玉を動かす。その相貌といい、まるで妖怪のようだ。冥星は昔本で見た『小豆洗い』という妖怪がまさか現実にいるとは思いもしなかっただろう。非科学的なことには興味がなかったが、こうして自分の目で見たものに関しては俄然興味が湧く。
「よし、?まえて博物館に飾ろうそうしよう」
「いいかげんにしろ! この方を誰だと思ってんだ」
「妖怪、小豆洗い」
「ぶっ……ち、違う! 大蔵――大蔵 臥(が)薪(しん)様だよ! 見てわかんないのか!?」
「知らんわ。偉い人なのか? 残念ながら俺は水戸黄門くらいしか知らないんだ。この紋所が目に入らぬか! じじい!」
冥星はまたもや暴走し始めてしまった。こうなってしまうともう後がつけられなくなる。必死に笑いを堪えつつ、青い顔のまま佇む凛音を余所に、冥星と大蔵 臥薪は睨むように見つめ合う。じじいと見つめ合う趣味など毛頭ないが、確かにこの老人が只者ではないことは見てわかる。
「小僧、わしが怖くないのか?」
「いまどき、子供に手を挙げる大人なんていないだろ。子供に関する法律が厳しくなったからな」
「賢いな、小僧。その通りだ。我々大人はお前たち子供に危害を加えることはできない。それは犯罪だからだ。強者が弱者を虐げることは、人の倫理に反する行いなのだ」
ところが、と臥薪は冥星たちの――ひざまずく子供たちの方へゆっくりと近づいてきた。
凛音によって強制的に頭を押さえられている冥星は、何をしようとしているのか把握できない。それは凛音も同じなはずだ。しかし、わずかに震えている手の感触に気が付いた瞬間、その手はあっという間に冥星の体から離れ老人の元へと引きずられていた。
「お、お許し、お許しください」
凛音は、消えそうな声で懇願する。冥星に怒鳴っていた彼女はもうどこにもいない。肉食動物に捕食された草食動物。蛇に睨まれた蛙。
この、法律に守られた国家で、老人は少女の体を自由に痛めつけることができた。何度も、何度も、執拗に、刻みつけるように、弱弱しい力だが、確実に、その凶器で。凛音は叫び声を何度もあげる。痛々しく、悲しげに。だが、少女は決して助けを求めない。それは、強がりではない。助けなど、来るはずがないと知っているからだ。
「小僧、お前の常識を、
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