世界の掟−−農家はやっぱりすごい
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るからよ……」
「断る、帰る、帰る、帰るったら帰るのぉ!!」
わめく冥星の首根っこを掴み、凛音は笑いながら表に連れ出す。その悪魔のような笑みに、冥星は戦慄を覚えるのだった……。
「立て、立つんだ冥星! お前の力はそんなものか!? もっと燃えろよ熱くなれよ! 頑張れ! できるって! 気持ちの問題だって!」
どこかで○造が叫んでいるような気がした。なぜ凛音と一緒にいると自分はいつも地面にへばりついているのだろうか。答えは簡単だ。こいつがやっぱりゴリラ女みたいだからだ。
ゴリラ女は満面の笑顔で冥星をからかっている。
なんだ、そんな顔もできるのか、と冥星は荒い息をたてながら見つめていた。いつも不機嫌そうな顔しかしないのだと思っていたが思い違いだったらしい。
「なんだよ冥星……よわっちいな。そんなんじゃ、てめぇの大切なもん、守れねぇぞ」
そんなものはおそらく毎日の食事と睡眠くらいだろう。それくらいなら今の自分でも十分守れる自信がある。ただ、奪い輩が多すぎるだけだ。そう言いたい冥星だったが、あいにくもう言葉にするのも億劫なくらい疲弊していた。
「凛音は……なぜ強くなろうとする?」
突然冥星は我ながら愚にも等しい質問を相手にしてしまった。既に言葉にしてしまったものを訂正することもできず、赤い髪の騎士に問いかける。
「大切な人、守りたいからに決まってんだろ」
差し伸べてくれた手を冥星は素直に握った。
六道凛音は強かった。自分の何倍も、数倍も。それは力だけではなくその心の強さも合わせてだ。
何よりも、冥星は少女に勝てない理由を見つけてしまった。それはどうしようもないくらい途方に暮れる答えで。
例えるなら未来を見据える子供を、老いた目で眺める老人のような気持ちだ。
そんな力はもう自分にない。あるのはただ怠惰に過ごす日々と、食事のみ。
冥星は、生きていくことしかできないのだ。そうするしかないとあの日誓った。
そんな冥星には、凛音という少女が眩しく見える。
もちろんそんなことは悔しいので言わないが。
「――化け物が、何をうろちょろしている」
気が付けば、冥星たちのことをじっと見つめる者がいた。
体格のいい老人だ。鋭い鷹のような瞳が印象的で、威厳のある風格をしている。
杖を手に持っているが、体の筋はしっかりしていて特に必要とは感じられない。
だが。
「おかえりなさいませ、ご主人様」
「おい、どうしたいきなり? そんなにかしこまらなくてもいいぞ、気にするな」
「お前じゃねぇよ……ほら、頭下げな」
冥星は凛音の腕力によりあっという間に頭を地面に叩きつけられ、抉られ、めり込まれた。どうやら自分に対してかしこまったわけではないらしいとようやく気
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