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Myu 日常編
世界の掟−−農家はやっぱりすごい
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イエット中っつったろ? 文句言うならやんねぇぞって、もう食ってるし」
「こんな、もぐ、飯、くらい、もぐ、で、俺の、もぐ、怒り、もぐ、が」
「食いながらしゃべんな……きたねぇな」

 やけくそになりながら丼一杯の飯を掻き込む冥星。その食い気の良さに感服しながら凛音も静かに卵をかき混ぜる。その上に醤油をかければ立派は卵かけご飯、略してTKGの完成だ。
知らず知らずに、どんな奴かも知らない男と飯を共にしていることを不思議に思う凛音だったがもうどうでもよくなっていた。とはいえ、警戒を怠っているわけではない。こいつが、本家である大蔵家に忍び込む不逞の輩ではないかという疑念を払拭しているわけではないのだ。

「お前、ほんとに飯食いに来ただけなのか?」
「そうだと最初から言っているだろう。いい加減しつこいな」
「むかっ……自分の家で食えばいいだろうが。なんでわざわざこっちまで来て飯食ってんだよ」
「訓練をサボったら飯を抜かれた。故にどこかで兵糧を奪取しなければいけかなかった。戦の基本だな」
「ぜんっぜん基本じゃねぇよ! ただのサボりじゃねぇか! やっぱお前、どうしようもない奴だな」
「くだらない武術を習うほど無駄な時間はない。俺の時間は俺が使うためにある。争いなど、愚かな人間のすることだ」
「……武術は、無駄じゃねぇよ」
 どん、という音が広いテーブルに鳴り響く。そういえば、と冥星は改めてこの屋敷をぐるりと見渡す。
 休日だというのに、ここには凛音一人しかいない。冥星が通されたのは大蔵の所有する敷地の一郭だ。門の正面を真っ直ぐ行けば大蔵家、中央から右に行けば六道家、左に行けば篠崎家、といった構造になっている。
 ならばと隼人顔を拝みに行きたかったがどうやら今日は大蔵家に招かれているらしく留守らしい。
 ゴーンと大きなのっぽの古時計が鳴り響き再び時間を刻む。その音と箸の音だけが凛音のすべてだ。

「武術は、人を守るために必要な力だ。だからくだらない、なんてことはない」
「……訂正する。俺にとって必要ないっていう話だ。そんなに怒るな、かわいい顔が台無しだぞ」
「!? バカにしてんのかてめぇ! わ、私が、か、可愛いなんてバカじゃねぇの!?」
「冗談だ」
「殺す表に出ろ」
「箸を人に向けるな刺すなちょっとだけいい顔をしていると思ったこれはほんとのことだ!」

 結局最後は暴力に訴える凛音に辟易しながら、残りの飯を掻き込む冥星。余計なことを言うつもりはなかったが、ついついおちょくるような真似をしてしまった。
 そんな、泣きそうな顔で怒られたら、そうしたくもなる。

「よし決めた……やっぱりお前とは正々堂々戦わないと気がすまねぇ。表に出ろ」
「言われなくても表に出る――――帰るために」
「逃げんなよ……たっぷり可愛がってや
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