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第一章
悪の大幹部
徳丸秀夫は俳優である。ある筋においてだ。彼を知らない者はいない。何故彼がそこまで知られているかというとである。
彼は特撮番組によく出ているのだ。常連と言ってもいい。しかし彼はそれなりに年配でありヒーロー役ではない。では何で有名かというとだ。
悪役である。それも常に大幹部や黒幕といった役で出ている。その悪役ぶりがかなり凄まじくだ。まさに圧倒的な悪役なのである。
悪の限りを尽くしている。主役の前に立ちはだかりだ。憎たらしいまでに謀略を使いそして圧倒的な強さで倒していく。最後の最後では倒されるのが常であるがそれでもだ。彼の演じる役の所業はどれもだった。
悪役に相応しい。その悪役ぶりがあまりにも印象的でだ。彼は有名になっていのだ。しかしである。
彼は嫌われてはいなかった。むしろ特撮ファンからは人気がある。その人気故にだ。彼が街を歩いていたりするとだ。すぐにこう声がかかるのだ。
「あっ、徳丸さん握手して下さいよ」
「サイン御願いします」
「一緒に写メール撮っていいですか?」
こんな感じでファンが来るのだ。無論彼はそうした申し出を全て笑顔で受ける。だがその際いつもこう言われるのだった。
「もう徹底的に悪そうな顔で御願いしますね」
「あの幹部の名前でサイン御願いします」
「悪の笑顔で写メールを一緒に」
「そういう感じで御願いします」
こうした注文ばかりであった。とにかく彼が悪役であるということがだ。しかも特撮番組の悪役であるということがだ。その元となっていた。
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