Episode5 変わらぬ決意
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た。決して演技なんかじゃない。そう感じたから、僕は無言で右手を差し出した。差し出した手に、リズさんはゆっくりと手を重ねてくる。僕はそれを優しく包むように握った。すると、彼女の表情が安心した、それへと変化していく。
(僕は、リズさんを傷つけることになるかもしれないな……)
自意識過剰であったり、勘違いであってほしい。それなら、僕だけが馬鹿を見るだけで済む。しかし、もしも彼女の気持ちが僕に向いていたとしたら―――
(リズさんの心に傷をつけてしまう。僕はリズさんの気持ちに、答えることができないから……)
そのときは、残酷ではあると思うけど、そのことを告げなければならない。
(ホント、僕は酷い人間だ……)
その気がないのに、優しさだけを振りまく。しかし、困っている人を見過ごせない。これでは、他人の心を弄んでいるのと、何も変わらない。
「シンは―――」
「ん?」
「シンは、何の為に戦ってるの?」
「僕が戦う理由ですか?」
「うん」
「戦うといっても、僕は攻略組の人たちのように強くありませんから、このゲームをクリアする為、とは正直なところ違います」
これは、本当のことだ。今の僕では最前線は愚か、この洞窟ですらギリギリというところなのだから……。だけど―――
「ただ、たとえゲームクリアに直接貢献できなくとも、今の自分にできることを精一杯やろうと思っています。それが、どんなに小さなことでも……。何もしないで、ジッとしているのだけはしたくなかった。だから、僕は戦っています」
戦うことを選んだ。
(それが、どんな結末を迎えるとしても……)
闇の底で、小さな希望という光を見つけたときから、戦い続けると誓った。
(その光を信じて、戦うと約束したんだ!)
その決心は揺らぐことはない。たとえ、どんな困難な道でも、どんなに絶望を感じようとも、諦めたりしない。
「シン、ありがとう」
「ん?感謝されるようなことは、言った覚えはないのですが?」
「うんん。シンが気づいてないだけよ」
「そうですか……。よく分かりませんが、折角なので受け取っておきます」
「そう、それでよし!」
先ほどの作り物の笑顔でなく、本当の笑顔。とてもきれいで、太陽のように明るい笑顔。僕には眩しすぎるので、思わず視線を外してしまった。その際、握っていた手も離してしまう。すると、リズさんが少し残念そうな表情になってしまう。
(はぁ……。これは、決定かな?)
神様というのは、残酷なカードを切る。よく言われるが、あながち間違いではないと思う。僕に大半の原因があることは承知だが、世界のシステムというのは、やはり残酷にできている。
(告げるのは、早いほうがいいかな……)
そう決意し
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