Episode5 変わらぬ決意
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いくような気がしてならない。たとえ、それが偽者であっても……。
(ダメね……。いつもの元気なリズベットに戻れそうにないかも……)
マイナスな事ばかり考えてしまう。自分でも分かっている、しかし自分の心を制御できないでいる。そんな時、シンが隣に腰掛けてくれた。それだけで、少し不安が取り除かれる。隣に座るシンの手に目を向ける。
(キリトの手、温かかったなぁ)
あの時、心に感じた温かさを思い出す。人の温もりが、この不安を打ち消してくれるかもしれないと思った。
「「シン(リズさん)―――」」
お互い、同じタイミングで呼び合う。
「「シン(リズさん)からいいわよ(どうぞ)」」
またもやタイミングが一緒だった。それが、少し可笑しかった。
「僕のは、あまり重要なことじゃないので、リズさんからどうぞ」
シンが先を譲ってくれた。少し気になるけど、お言葉に甘えるとする。
「ねぇ……手、握ってもいい?」
シンが突然のことに少し表情を変える。しかし、すぐに笑って右手を差し出してくれた。あたしは、ゆっくりと右手を動かし、シンの手の平に自分の手をそっと重ねた。すると、シンが優しく包み込むように握ってくれた。
(……温かい)
目を閉じ、肌寒さを忘れ、温もりを感じる。たとえ仮想世界だとしても、生きていると感じる。あたしの心の中にある不安な気持ちは、全て消えてはくれないけれど……、少しだけ小さくなった気がした。
「シンは―――」
「ん?」
「シンは、何の為に戦ってるの?」
「僕が戦う理由ですか?」
「うん」
「戦うといっても、僕は攻略組の人たちのように強くありませんから、このゲームをクリアする為、とは正直なところ違います」
手を握ったまま、遠くを見つめ、シンが語りだす。その瞳がどことなく悲しみに染まっていた。
「ただ、たとえゲームクリアに直接貢献できなくとも、今の自分にできることを精一杯やろうと思っています。それが、どんなに小さなことでも……。何もしないで、ジッとしているのだけはしたくなかった。だから、僕は戦っています」
強い人だと思った。力とかじゃなくて、心がとても強い人だと……。その強さにあたしは惹かれた。そして、あたしの中にある感情が、次第に大きくなっていくのが分かる。
(そっか……。あたし、シンのこと好きになっちゃったんだ)
先ほどまで存在していたはずの不安が、いつの間にか無くなっていたことに気づいたのは、もう少し後のことだった。
「ねぇ……手、握ってもいい?」
予想外のお願いに少し驚く。また、からかっているのかと思ったが、リズさんの目を見たとき、それを否定した。その瞳が僕に助けて欲しいと、懇願しているように思え
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