暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアート・オンライン 〜命の軌跡〜
Episode5  変わらぬ決意
[5/7]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初
いくような気がしてならない。たとえ、それが偽者であっても……。

(ダメね……。いつもの元気なリズベットに戻れそうにないかも……)

 マイナスな事ばかり考えてしまう。自分でも分かっている、しかし自分の心を制御できないでいる。そんな時、シンが隣に腰掛けてくれた。それだけで、少し不安が取り除かれる。隣に座るシンの手に目を向ける。

(キリトの手、温かかったなぁ)

 あの時、心に感じた温かさを思い出す。人の温もりが、この不安を打ち消してくれるかもしれないと思った。

「「シン(リズさん)―――」」

 お互い、同じタイミングで呼び合う。

「「シン(リズさん)からいいわよ(どうぞ)」」

 またもやタイミングが一緒だった。それが、少し可笑しかった。

「僕のは、あまり重要なことじゃないので、リズさんからどうぞ」

 シンが先を譲ってくれた。少し気になるけど、お言葉に甘えるとする。

「ねぇ……手、握ってもいい?」

 シンが突然のことに少し表情を変える。しかし、すぐに笑って右手を差し出してくれた。あたしは、ゆっくりと右手を動かし、シンの手の平に自分の手をそっと重ねた。すると、シンが優しく包み込むように握ってくれた。

(……温かい)

 目を閉じ、肌寒さを忘れ、温もりを感じる。たとえ仮想世界だとしても、生きていると感じる。あたしの心の中にある不安な気持ちは、全て消えてはくれないけれど……、少しだけ小さくなった気がした。

「シンは―――」
「ん?」
「シンは、何の為に戦ってるの?」
「僕が戦う理由ですか?」
「うん」
「戦うといっても、僕は攻略組の人たちのように強くありませんから、このゲームをクリアする為、とは正直なところ違います」

 手を握ったまま、遠くを見つめ、シンが語りだす。その瞳がどことなく悲しみに染まっていた。
 
「ただ、たとえゲームクリアに直接貢献できなくとも、今の自分にできることを精一杯やろうと思っています。それが、どんなに小さなことでも……。何もしないで、ジッとしているのだけはしたくなかった。だから、僕は戦っています」
 
 強い人だと思った。力とかじゃなくて、心がとても強い人だと……。その強さにあたしは惹かれた。そして、あたしの中にある感情が、次第に大きくなっていくのが分かる。

(そっか……。あたし、シンのこと好きになっちゃったんだ)

 先ほどまで存在していたはずの不安が、いつの間にか無くなっていたことに気づいたのは、もう少し後のことだった。



「ねぇ……手、握ってもいい?」

 予想外のお願いに少し驚く。また、からかっているのかと思ったが、リズさんの目を見たとき、それを否定した。その瞳が僕に助けて欲しいと、懇願しているように思え
[8]前話 [1] [9] 最後 最初


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ