Episode5 変わらぬ決意
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は、会話が続かないようになっているものだ。もともと、話術に富んでいるわけでもないので、当たり障りのないことを聞いてみることにする。
「「リズさん(シン)―――」」
漫画やアニメのお決まりというヤツだ。お互い同時にしゃべりだす、という少し貴重な体験をした。となると、次はきっと―――
「「リズさん(シン)からどうぞ(いいわよ)」」
うん。やっぱりセオリー通りだ。
「僕のは、あまり重要なことじゃないので、リズさんからどうぞ」
何をやってもうまくいかない。それを何とかしようと頑張っても結果が、どんどんと最悪な方向へ進んでいく。そんな経験をしたことがあるだろう。あたしは今、そんな境遇にいる。
「せっかく来たのに……。はぁ、ツイてないな……。きっと今日の運勢最低ね」
「そう、落ち込むことないですよ。三時間後、またチャンスがあるんですから」
「そうだけど、なんか悔しくてね」
「悔しい?」
「うん。悔しい。まぁ、元はあたしに原因があるんだけどね。マスタースミスとは名ばかりで、あたしもまだまだ未熟だってこと、改めて痛感したわ」
右も左も分からなかった頃、我武者羅に一つ一つの武器を作っていた頃なら、こんなヘマをすることはなかった。不意に涙が込み上げて来るのを、グッと堪えて無理やり笑顔を作る。あの時、キリトのお陰で思い出すことのできた気持ち。忙しさのあまり、また忘れてしまっていた、自分の不甲斐なさが悔しかった。
「リズさんは凄いですよ」
「えっ?」
「だって、自分を未熟だと言える人は、なかなかいません。自分をよく見つめることができ、自分をよく知っている証拠です。だから、リズさんは凄いですよ」
慰めてくれているのだろう。シンは優しい。これは多分間違っていない。それに、物事をよく見ている、かなりの観察眼の持ち主だ。だから―――
(きっと無理に笑ったのが、ばれちゃってるわね)
気づくと、安地まで戻ってきていた。一度もモンスターとエンカウントしなかったのは、幸いだと思う。正直、今の状態では戦うことができない。なので、気持ちが落ち着くまで休むことにする。シンの立っている側に、座れそうな、ちょうどいい感じの岩を見つけたので、そこに腰を下ろす。シンは相変わらず、立ったままだ。
「シン、座らないの?」
「はい。僕はこのままで大丈夫です。気にしないでもいいですよ」
「そうは言うけど、気になるのよ。ねぇ、ここ座って」
そうは言ったものの、実際は側に居て欲しいと思った。優しいシンに少しだけ甘えたい。キリトの時のように、人の温もりが欲しい。じゃなきゃ、不安で仕方がない。実際、死に直面しそうな状況というわけではない。だけど、あたしがこの世界で、今まで積み上げてきたモノが、少しずつ崩れて
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