第一部 学園都市篇
第1章 虚空爆破事件
18.July・Night:『The Planet Wind』
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その後、風邪がぶり返し気味の飾利を涙子に任せて現場の調査に当たる。
今回、犯人として警備員《アンチスキル》に拘束された少年は、黒子からの情報によれば『介旅?初矢』という――――『異能力者』の少年だったとの事。
――あれで異能力……? なら、俺も今ごろ大能力の仲間入りだぜ。
スプーン一本のアルミでフロア一つを焼く威力、それで異能力ならば、超能力の美琴などは地磁気を操って自転を止めるとかで、地球上の生命全てを滅ぼす事も訳無いだろう。
だが実際、幾ら美琴でもそんな事は出来まい。出来ないし、出来たとしてもやるまい。何の意味もないから。
「……破壊力だけなら、完全に大能力なんだけどな。強度を誤魔化してたのか?」
「可能性としては、それが一番有り得ますけれど……周りから聞いた話では、どうも彼は陰湿なイジメを受けていたらしいんですの。それならば、これだけの能力は隠すよりも誇示した方が」
「イジメはなくなるよなぁ、趣味でもない限り。携帯とか、財布の一円玉が大爆発なんて勘弁だし」
警備員が施した『立入禁止』のテープの内側で、黒子と並び立ったまま首を傾げる。どう考えても、腑に落ちないのだ。この事件は。
因みに、この事件よりも頭を悩ませているのが、黒子との接し方だ。日に二度も怒られたのだから、素直に隣に立って良いものかと。
「「……その」」
「「な、何か?」」
と、同時に切り出してしまう。そして同時に聞き返した。
何とも言えない気まずさに、ついっと二人して視線を反らして。
「……初春の事、ありがとうございますの。あの娘が怪我をしなくて済んだのは、対馬さんが庇って下さったからだと」
「あぁ――いや、そんな大した事じゃないよ。それしかできない状態なんだから、それをやっただけ」
第一、後でこの威力を見て寒気がしたものである。どう考えても、あの『能力を無効化する男子生徒』が居なければ、今頃は集中治療室だ。
何とも締まらない話である。要するに、ヒーロー気取りで出てきた脇役が本物のヒーローに救われた挙げ句、手柄を譲られたのだ。
「……それでも、友人として礼を言わせて下さいな。それと……年下の分際で、生意気を申した事も……併せて謝りますの」
「白井ちゃん……」
それでも、甘んじよう。それでも……ただ、己が苦しめばいいだけの問題ならば。暴き立ててまで正論を貫いたところで、誰に、何の得があろうか。
そのはにかんだような微かな笑顔。それだけで十分、報われている筈だ。否、過ぎた幸福である。
「実は、この事件だけではありませんの。最近、どうも書庫のデータと実際
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