第一部 学園都市篇
第1章 虚空爆破事件
18.July・Night:『The Planet Wind』
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」
折角の現実逃避から引き戻され、がくりと肩を落とす。思い返すのは、かの魔本ののたうつ不快な手触りと饐えきった生臭い腐敗臭。
もう一度出くわせば、今度こそは狂える自信がある。都合の良い助けなど、もう現れはしないだろう。
「ふむ……そうですね、では、コレなど如何でしょうか」
「なんです、コレ……ロケット?」
差し出された、銀色の鍵を模したデザインのロケット。開かれている蓋、その内には――七つの支柱に固定された、紅い線の走る、黒い不揃いな切り出しの多面体。
何の宝石かも分かりはしないが、その妖しい魅力は嚆矢の目を強く惹き寄せた。
「『輝く扁平四面体』と言いまして……古代エジプトのネフレン=カ王の時代の御守りのようなものです。この石を見せている間は、余程のモノでもなければ近寄る事も出来ないらしいですよ」
その言葉に、偽りはないと何故か信じられる。それ程のモノだ、コレは。
無条件で腑に落ちたその感慨に、ロケットに手を伸ばす。触れた銀の質感は、何故かしっとりと有機質だった。
「――――――――!」
その刹那、悪夢を見た。響く横笛の、か細く呪われた単調な音色。くぐもった太鼓の、狂える下劣な連打。
それに合わせて無意味に踊る、■■どもの吐き気を催す輪舞。それを唯一の無聊とする、沸騰する混沌の玉座の只中に、退屈と飢餓に悶え、冒涜の言辞を撒き散らす盲目白痴の――――
「――――止めておきなさい。それ以上を見れば、最早戻ってはこれませんよ?」
「――――ッ!」
強く肩を叩かれ、漸く正気を取り戻す。気が付けば、冷や汗と震えに夏の夜気等は遠く逃げ去っていた。
比較にすらならない。あんな駄本程度、ここから覗いたモノの、どれにも及ばない。
「今、君が見た通り……そこから見える風景に在る『者共』の為に、この世にある程度の存在であれば近付く事すら容易ではありません。それで、『妖蛆の秘密』が諦めるまで持ち応えてください」
「結局、我慢比べっすか……まぁ、得意技ですけどね」
すっかり冷めた珈琲を啜り、辛うじて人心地付いた。どうにか、安心とまでは行かずとも納得出来る対処が望めたのだから。
となれば、後の懸念は只一つ。
「で、こうなったからには件の錬金術の教書は勿論、タダで戴けるんですよね?」
「やれやれ……先日の台詞、そのままお返ししますよ」
苦笑したニアルが、カウンターの上に三冊の本を置いた。
「右から、『錬金の鍵』に『賢者の石』……そして、最後の一冊だけは君に紐解いて欲しい」
「今度は呪われてませんよね?」
「私が直接確かめてあります。最後の一冊は、私
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