第一部 学園都市篇
第1章 虚空爆破事件
18.July・Night:『The Planet Wind』
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まで一休みすらせずに走ってきた、汗だくで息を切らせた嚆矢を。
………………
…………
……
先程起きた事の全てを話し終え、嚆矢は珈琲を啜る。深炒りによる奥深い苦味とコクが、僅かに落ち着きを与えてくれる。
そんな彼に、ニアルは心底の謝意と共に頭を下げた。
「――こんな事に巻き込んでしまって、誠に申し訳無い。信頼していた入荷元だったのですが……どうやら、信頼しすぎて隠匿されていた『妖蛆の秘密』の頁を見逃していたようです」
「いえ、まぁ、死ぬかと思いましたけど何とか生きてますから……あんまり気にしないで下さい」
端正な美貌を慚愧の念に歪めたニアルに、嚆矢は苦笑いを返す。
「にしても、聞きしに勝るヤバさの代物ですね、『魔導書』って……」
「物にも依ります。大体は只の魔力炉のようなものですが、今回の『妖蛆の秘密』のような『原本』は自我すら持ちうる。しかも、並大抵の事では不滅ですからね……」
「不滅……じゃあ、もしかして」
「はい、恐らく……また現れます。君とかの魔本が存在している限り、近い内に」
慄然たる思いで、その言葉を受け止める。あんな、正気を失いそうな化け物に魅入られてしまったなどと。
「……それにしても、『妖蛆の秘密』を知っていた修道女と女銃士ですか」
「何か、知ってるんですか?」
思案するニアルに、嚆矢は水を向ける。しかし、魔導師は曖昧に笑っただけ。
「前者については、噂くらいは。何でも、『イギリス清教のとある部門必要悪の教会には、全ての禁書を暗記して行使する――――禁書目録なる修道女が居る』という噂がありまして」
「『必要悪の教会』に、『禁書目録』……」
全く知らない単語を、記憶に刻む。正直、イギリスと言う国はエリン出身の義母の『最高級料理がフィッシュ&チップス』や『世界規模の侵略&植民地支配&奴隷売買の三冠女王国家』などの消極的宣伝により、あまり良い印象はない国だが。
「眉唾物ですけどね。そもそも、あんなものを数万冊も読んで――――正気が保てると思いますか?」
言われてみればその通りだ、と納得する。只の一冊、『妖蛆の秘密』だけでも、底無しの狂気に飲み込まれそうな程の邪悪である。
あんなものを複数目に通すなど、あんなぽややんとした少女で耐えられるものか、と。
「話が脱線しましたね。今は、君を『妖蛆の秘密』から守る方法を考えなければいけませんでした」
「ですね、割と切実に助けて欲しいです……
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