第一部 学園都市篇
第1章 虚空爆破事件
18.July・Night:『The Planet Wind』
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悪である。放課後の、受かれていた自分を本気でぶん殴ってやりたい気分だ。
綴里の運転する車――装甲車に乗せられ、隣には愛穂。一面だけでも楚歌である。尚、『妖蛆の秘密』は助手席の彼の鞄の中。『星の吸血鬼』は、既に送還してある。あんなものはいつまでも隣に置いておくべきではない。
「あの、流石に俺、連行されるくらい悪い事はしてないかと」
その筈である。喫煙なら、口頭で注意くらいが妥当ではなかろうか。
「ハハ、心配しなくても良いって。元々そういう立場じゃん、お前は」
「まぁ、そうですけど……あそこまであからさまだと、不審に思われるんじゃないかと」
と、窓に頬杖を付いたところで、ガタンと車が揺れた。赤みがかってきた陽射しに、蜂蜜の瞳が橙に潤む。
「今回、新しい『任務』が決まったのよ。まぁ、私としては……まだ『学生』の君にはやらせたくないんだけど……」
「今更ですよ、鉄装さん。俺も綺麗な人間じゃありませんから――今更、非合法の一つや二つ」
ナハハ、と自虐めいて笑う。それに、愛穂と綴里は寧ろ厳しい表情を見せた。
教師として、先達として。
「それが、暗部への潜入でも?」
夕陽を跳ね返す綴里の眼鏡、その奥の真意は読めない。だが――
「ダブルどころかトリプルかぁ、そりゃあいい。風紀委員から暗部にただいまだ」
『何でも無い』とばかりに、嚆矢はにへら、と笑った。
………………
…………
……
日の落ちた逢魔の刻限、やっと警備員第七十三支部を後にする。因みに私服姿に着替え済み。何故ならスクーターは学園近くの為、かなりの距離を歩く事となったからだ。
しかし、今はその方が都合がいい。歩く距離が長い方が、『昔の勘』を取り戻せる気がした。
――学園都市の暗部への潜入、か。
戦利品ではなく自前の煙草を取り出して、鉛色のオイルタンクライターで火を点す。
肺に貯めた香気を吐く。紫煙は、ゆるりと夏の宵の生ぬるい空気に融けていく。風の無い不快な夜気の底で、嚆矢は新たな『指令』を反芻する。
『要するに、治安維持の為に学園都市の暗部で活動する組織の実状を探って欲しいそうじゃん、うちの上層部は。全く、風紀委員にアンタを潜入させた時といい、とことん他所を信用してないんだよ』
と、愛穂が辟易した顔で告げた。まぁ、教師である彼女達からすれば、学生の自主性を基礎とした風紀委員に大人が介入する事を是とはしたくないのだろう。
しかしまぁ、『学生だけで成り立つ組織』等という夢想を信じるのは、世間知らずの学生達か、余程社会常識に反感を持つ大人くらいのモノだ。
どんな活動にも資金、そして信頼は不可欠。金も権力もな
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