第百六十話 四人の男達その三
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「入ろうぞ」
「寺は完全に囲まれていますが」
しかしだった、彼等もわかっているからこそ言えた。
「それでもですな」
「そうじゃ、忍道は我等だけが知っている道じゃ」
例え今の様に多くの軍勢に囲まれてだというのだ。
「あそこに入ればな」
「はい、ですな」
「紀伊に残っている者達にも知らせましょう」
「そうして我等は石山に入り戦いましょうぞ」
「これからは」
「そうするぞ、ではよいな」
雑賀は配下の者達に告げた、こうしてだった。
雑賀衆はその闇の者達とは組まなかった、石山に入りそのうえでそこで籠って戦うことにしたのだった。
残ったのは闇の服の者達だった、その中に痩せた老人と三人の男達がいた。
一人はやけに大きな髷に装飾の多い服を着た大男だ、一人は刀を持ったすらりとした長い髪の男であり肌は紙の様に白い。最後の一人は小柄な忍装束の男だ。
その三人に対してだ、老人は言った。
「雑賀衆は去ったな」
「はい、確かに」
「石山に入りました」
「そうしました」
「わかった」
老人は三人の言葉に答えて頷いた。
「ならよい」
「雑賀衆がおらずともですか」
「我等は戦える」
「そういうことですね」
「そうじゃ、むしろじゃ」
雑賀衆がいる方がだというのだ。
「あの者達は鋭い」
「忍であるが故に」
「それで、ですな」
「勘がいい故に」
忍は勘が鋭い、さもなければ生きていくことが出来ないのが忍だ。このことは雑賀衆もまた同じだというのだ。
「それで、ですか」
「彼等もですか」
「いない方がいいですか」
「そういうことじゃ」
老人は三人に言いこうも言った。
「我等とてそうであろう」
「確かに」
着流しの男が応える。
「そのことは」
「我等は伊賀におる」
老人はここで言った。
「一応な」
「伊賀の百地」
「それですからな」
「だからこそ」
「伊賀は二つある」
老人も言う、このことを。
「まつろう服部とその一派」
「そして我等ですな」
今度は小男が言ってきた。
「まつろわぬ百地の一派」
「闇の我等がじゃ」
「ですな」
「まずわしがおる」
老人は自分のことをここで言った。
「この百地三太夫、そしてじゃ」
「はい、そして」
「我等も」
「石川五右衛門」
百地はまずは大男を見た、彼の顔は眉が太くその顔立ちはしっかりとしていて実に男らしい、そうした顔である。
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