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戦国異伝
第百六十話 四人の男達その二

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 長可は無言で頷く、そしてだった。
 彼等は砦から出てそこを軸として布陣する、そのうえで守りを固める。その守りは二重三重のしっかりとしたものだ。
 その布陣を見てだ、雑賀は目を鋭くさせて述べた。
「見事な布陣じゃな」
「はい、確かに」
「寸分の隙もありませぬ」
 周りの雑賀衆の者達も言う。
「これではですな」
「迂闊に攻められませぬ」
「これではとてもですな」
「砦も」
「これでは攻められぬ」
 雑賀は馬上で腕を組み言った。
「本陣も来る、だからな」
「うむ、ここではですな」
「紀伊に退くべきですか」
「それに」
 雑賀衆の者達はその紀伊の方を見た、そのうえでだった。
 彼等を見てだ、そして言うのだった。
「あの者達は一体」
「一向宗でしょうか」
「どうやら我等と同門かと思われますが」
「しかし」
「何じゃ、あの色は」
 雑賀もだ、彼等の旗や衣を見て眉をいぶかしげにさせて言った。
「闇の色じゃが」
「ですな、上杉の黒でもありませぬ」
「ましてや本願寺の灰色ではありませぬ」
「闇の色の旗や衣なぞ」
「一向宗の色ではないですが」
「しかし我等の味方の様です」
 見れば本願寺の念仏や文字が旗に掲げられている、それを見れば一向宗だ。闇の旗にそれより幾分かは薄い黒で書かれていた。
「同じ一向宗である様ですが」
「しかししあの旗は」
「一体何者でしょうか」
「わかりませぬな」
「あの者達は知らぬ」
 雑賀はいぶかしむ顔のまま言い切った。
「何処のどういった者達じゃ」
「しかし数は多いです」
 ここでだ、雑賀衆は言った。
「あの者達は」
「二十万はいますぞ」
「より多いかも知れませぬ」
「二十万のう」
 その数も聞いてだ、雑賀はまた言った。
「尋常な数ではないぞ」
「ですな、どう考えても」
「普通の数ではありませぬ」
「何処にそんな数がおるのか」
「紀伊から来た様ですが」
「わからぬことだらけじゃな」
 またこう言う雑賀だった。
「あの者達はな」
「ではどうされますか」
「得体が知れぬ、あの者達はな」
 これが雑賀が最初に言った。
「だからここはな」
「共闘しませぬか」
「そうされますか」
「怪しいわ」
 こうも言う雑賀だった。
「怪しい者達とは組まぬに限る」
「ですな、それでは」
「ここは」
「石山に入るとしよう」
 顕如のいるそこにだというのだ。
「そうしようぞ」
「石山に入り籠城ですか」
「そうされますか」
「忍道を使ってな」
 雑賀はその巨大な寺の方を見て言った。
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