第百六十話 四人の男達その一
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第百六十話 四人の男達
森ははっきりと見た、南の方から相当な数の大軍が来るのを。その衣も旗も全て闇そのものであった。
その闇の者達を見てだ、石田は眉を顰めさせて森に言った。
「出ましたな」
「うむ、相変わらず多いのう」
森も苦々しい顔で石田に応える。
「あ奴達がな」
「はい、そうです」
こう言うのだった。
「この戦は雑賀衆だけでなく」
「あの者達も倒さねばな」
「しかしここは」
「数が多い、だからな」
それでだとだ、こう話してだった。
森は己が率いる全軍、即ち第二陣にこう言った。
「攻めるのは止めじゃ」
「それではですな」
「ここは」
「うむ、攻めるのを避けてじゃ」
そのうえでだというのだ。
「一旦砦に入る、そしてじゃ」
「砦を要としてですな」
ここで森に言ったのは島だった。
「そうしてですな」
「うむ、守る」
そうするとだ、森も確かな声で答えた。
「そうして殿が来られるのを待とうぞ」
「ではすぐに本陣にまで使者を送りましょう」
石田がすぐに気を利かして言った。
「そうしましょうぞ」
「そうじゃな、ではな」
「すぐに」
また言った石田だった。
「そうしましょう」
「うむ、しかしよく気が利くのう」
森はここで石田のその気質について言った。
「いつも思うが」
「そうでしょうか」
「しかし今はそれを使わせてもらう」
その気の利きをだというのだ。
「是非共な」
「それでは」
「よし、ではここは守る」
森はあらためて全軍に言った。
「そうしてじゃ」
「本陣が来るのを待ち」
「そうしてですな」
「勝つ、そうするとしよう」
森はこう言ってだった、そして。
彼等は砦に入った、そこで森は中川や己の息子と会った。そのうえで彼はここでこう言ったのであった。
「よく砦を守ってくれたな」
「はい、勝三殿が踏ん張ってくれました」
中川は長可を見つつ森に応える。
「そして攻めるべきという献策もしてくれました」
「左様か、しかしじゃ」
森は中川の笑顔での言葉を受けながら頷き我が子を見る、そのうえでこう長可に告げた。
「慢心はならんぞ」
「わかっております」
「ならよい」
我が子にはそれだけだった、そうして。
森はあらためてだ、今砦にいる主だった将達に告げた。
「では今からこの砦を軸として布陣をしてじゃ」
「守りを固めると」
ここで原田が応えてきた。
「そうされるのですな」
「そう考えておるがどうじゃ」
「そうですな、では」
「そうしましょうぞ」
中川と原田が応える、そうして。
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