第四章
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二人にとっては大団円だった、だが。
その噂が消えて暫くしてからだ、何と。
二人はそれぞれの妻達にそれぞれの自宅でこんなことを言われた。
「何か私が浮気してるって」
「とんでもない噂があったっていうけれど」
「あの、私そんなことはね」
「していないから」
「ああ、わかってる」
「その話はただの噂だからな」
二人はそれぞれの妻達にこう返した、それぞれの家の中で。
「だから気にするな」
「もう皆わかってるからな」
「そう、だったらいいけれど」
「皆わかってくれてるのなら」
「そうだ、だからな」
「この話は終わってるからな」
こう言って妻達を安心させた、しかし。
その話を妻達から聞いてだ、二人はうんざりとした気持ちになって。
二人で西麻生に出て飲んだ、行きつけのバーに入ってそこのカウンターで一緒にブランデーのロックを飲みながら話した。
「全くな、何ていうかな」
「終わったって思ったらな」
「何で今頃言われるんだ」
「噂話が復活するんだ」
「本当にな、おかしな話だったけれどな」
「まだ生きていたなんてな」
こう言いながら飲むのだった。
「やれやれだ」
「本当にな」
「この話は変に残ってるな」
「どうしようもなくな」
「あいつ等の耳に今更入って」
「家で言われるなんてな」
考えてもいなかった、それで今ここで話すのだった。
そうしたことを話して飲んでだ、そして程よく飲んで二人共憂さが晴れたところで店の外に出た。すると入った時は晴れていたが。
雨だった、宮坂はその雨を見てうんざりとした顔に戻って渡部に言った。
「最後の最後までな」
「嫌な話だな」
「帰ろうと思ったら雨か」
「お互いの女房子供の不倫話の後はな」
「全く、どうしたものか」
「何処かで傘買うか」
渡部が宮坂にこう提案した。
「それで帰るか」
「そうだな、タクシー代も節約しないとな」
「店員に日頃無駄使いを戒めてるしな」
「俺達だけそうしたら示しがつかないからな」
二人共浮かない顔のままでだった、そうして。
「それじゃあな」
「ああ、近くのコンビニで傘買って」
「それで帰るか」
「そうしような」
こう話してだった、二人は。
憂さ晴らしをした筈が結局憂さが晴れないままで帰った、結局何か何まで最後から最後までそうした話であった。
雨の西麻生 完
2014・5・1
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