第三章
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「別に構わないからな」
「レズは浮気にならないからな」
「まあこれはどうでもいい」
「全然な」
「だからこっちは置いておいてな」
「俺達も興味ないからな」
二人共お互いの妻、自分達の妹が同性愛に走ってもどうでもよかった。彼等の中でそれは浮気ではなかったからだ。
それで男のことに注目した、そちらはというと。
会っていた、それも頻繁にしていた相手は確かにいた。問題はその相手だった。
宮坂も渡部もだ、その相手を見てそれぞれ眉を顰めさせた、まずは宮坂が渡部のその顔を見て彼に問うた。
「おい、御前自分の妹に手を出してたのか?」
「それはこっちの台詞だからな」
渡部も宮坂と同じ顔になって彼に言い返す。
「御前シスコンだったのか」
「馬鹿言え、実の妹と寝るとかどんなエジプトのファラオだ」
「俺はチェーザレ=ボルジアじゃないからな」
このルネサンスの梟雄にはこうした疑惑もある。
「そんなことするか」
「そうだな、幾ら御前が妹思いでもな」
「妹はあくまで妹だ」
「性欲の対象じゃないな」
「そういうことだ、つまりな」
渡部はここでこう言った。
「俺達がそれぞれ妹と会ってな」
「その時を見られてな」
「ああ、あいつ等が浮気って思われたんだな」
「そういうことだな」
宮坂も渡部のその言葉に答えた。
「要するにな」
「全く、真相はこれか」
渡部はその調査報告を読みながら苦々しい顔で言った。
「何だって思えばな」
「山が揺れまくって鼠が一匹出た、か?」
「それはまた違うだろ」
「浮気相手が実の兄とかな」
「そんな何処かの小説みたいなことは大抵はないからな」
二人も近親相姦の話は知っているが彼等にそうした趣味はないのでこう言ったのだ。
「だからな」
「ああ、このことはな」
「誤解だな」
「そういうことだな」
山が揺れただのそうしたことではないというのだ、そうしてだった。
今度は宮坂からだ、こう渡部に言った。
「お互い妹に会うのは控えるか」
「その方がいいな」
渡部も彼のその提案に頷いた。
「そうしたらこんな話はすぐに消えるからな」
「所詮噂は噂だからな」
「真相がわかればすぐに消えるさ」
「嘘の噂はな」
確かに噂は何もかもを通り抜けしかも光の様に速いがだ。
「そうなるからな」
「そういうことだな」
二人はこれでこの話が終わったと確信した、実際にことの真相幸子と美奈代がそれぞれ自分の兄である二人と会っていただけだという事実がわかるとだ、百貨店の中からこの噂か完全に消え去った。それも瞬く間に。
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