クラス代表戦と赤い傭兵 前編……です。
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もちろん、生徒会の仕事である書類の整理は終わらせている。……まぁ、本音が仕事をしてくれればそれはそれでいいのだが―――一抹の不安が春奈に宿ったのにも無理はない。
春奈は鈴のISが近接格闘と中距離戦を主眼として、安定した稼働率を目指した中国第3世代ISの<甲龍>と目星をつけたのだ。
フリーダムの展開装甲[防御特化]に残されていたデータからあの時防いだ不可視のエネルギー体は衝撃砲の砲弾と考えればその可能性も高いことが伺えた。
射撃型のフリーダムにも近接ブレードが搭載されてはいるが威力は鈴の物理ブレードのほうが重く優れているだろう。
そこで、春奈は常に一定の間合いを取り隙を見つけては撃ち込む一撃離脱のバトルスタンスで挑むことにしたのだ。
無闇な格闘戦はせずに常に相手の挙動を読み、先回りする。これが彼女の出した答えである。
今の春奈はいつもの暖かな春のような気配とは打って変わり、鋭さと美しさを兼ね備えた剣の様に研ぎ澄まされた鋭敏な気配を纏っている。
これはいつになく彼女が本気に近い臨戦状態になっている証明であり、千冬でも話しかけるのを躊躇うほどの気配なのだ。
春奈は自身を一喝して士気を上昇させる。
「迷うな、貫け。守るな、攻め続けろ。諦めない、私は不屈の化身―――」
1拍子開けて彼女は吼える。
「迷破突貫―――やってやろうじゃん!」
彼女の声は暗い廊下に響き渡る。
―――試合開始までの時間は刻一刻と近づいていた。
●
○sideアリーナ観客席
アリーナの一角にある中段の席には千冬が腰掛けていた。
ここからであればアリーナ全体を見渡すことができるので彼女はこの席を選んだのだ。
「隣、失礼する。」
千冬の周りにはまだ生徒がいなかったので、その声はよく聞こえた。
少々癖毛の金髪に緑瞳。右目の周りには痣となった傷痕の残る顔はナイスガイという言葉が似合う長身の男性が傍らに立っている。
「エーカーか……お前も物好きだな。」
「物好きで結構。―――将来有望で私のライバルとなりそうな操縦者の下見さ。とはいえ、その可能性を持つのは君の姉弟か、それとも私の自慢の弟子か……。」
「ふんっ、相変わらずの過大評価だな。今のあいつらなどお前の足元にも及ばないだろう。」
少し不機嫌な千冬の物言いに苦笑いしながら彼は言葉を続ける。
「ふふっ[今のあいつら]……それは君の期待の裏返しじゃないのかい―――千冬?」
その言葉についつい素が出ていたことに気がついた千冬はそれ以上言うなといわんばかりに彼をにらみつける。
しかし、それが千冬の最大の照れ隠しであるということを知っている彼は特に気にはしなかった
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