第七章
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第七章
鴨鍋を囲んでだ。笑顔で話をしていた。
「今年もな」
「はい、よく採れましたね」
「しかも今年は豊作だったな」
「そうでしょね。豊作でした」
二人でこのことも祝うのだった。祝いながらだ。
鴨鍋を食べる。その味は。
「やっぱり美味いな」
「やっぱりまずはこれですよね」
「ああ、鴨鍋だ」
「最近はじめたこれですけれど」
「今はこれがないとな」
「終わったって気がしませんよね」
そのだ。合鴨農法の鴨である。鍋以外に燻製にもしている。
「最後の最後で食べて」
「ああ、今年も終わったってな」
「なりますよね」
「それで婆さん」
お爺さんは鍋の中の葱、自分達の畑のそれをつまみながらだ。お婆さんに尋ねた。
「一ついいか?」
「何ですか?」
「来年だけれどな」
もうだ。今からその話だった。
「来年はもう一つ野菜を作るか?」
「何をですか?」
「そうだな。サツマイモなんてどうだろうな」
それをだ。作ろうかというのだ。
「あれはな」
「そうですね。いいですよね
「ああ。丁度畑の余裕もあるしな」
「それじゃあ今度はそれですね」
「サツマイモは土地が悪くても採れて」
しかもだった。それに加えて。
「甘くて美味いからな」
「ですよね。おやつにもなりますし」
「じゃあ作るか」
お爺さんはすぐに決めた。
「来年はサツマイモもだ」
「精が出ますね」
「ははは、働ける限りはどんどん働くさ」
お爺さんはビールを飲みながらお婆さんに話す。
「そろそろあいつも戻って来るしな」
「和泉も」
「全く。東京の大学に行くなんてな」
「手が足りないですよね」
「仕方のない奴だ」
こうだ。自分達の娘について話すのだった。
「全くな」
「そうですよね。けれど」
「ああ、それでもな」
「農学部に行ってくれたから」
農家で農学部に進んでくれた。両親にとってはこのことも嬉しいことだった。実は大学に行ったことも嬉しいことだったのである。
「よかったよかった」
「本当に」
「後はあいつが結婚して」
「お婿さんが来てくれたら」
「万々歳だ」
「誰かいますかね、お婿さん」
「見合いさせるか?」
お爺さんは笑いながらこんなことを話した。
「一度な。そうさせるか」
「お見合いですか」
「ほら、津田さんのところの孝則君」
この名前を出す。近所の彼等と同じ農家をしている家の次男坊だ。彼は地元の大学に通っているのだ。その彼も同じくだった。
「農学部だしな」
「じゃあ丁度いいですね」
「ああ、農家の婿に丁度いい」
「それに農業やりたいって言ってますし」
「和泉とも仲がいいしな」
「それじゃあ話を進めるか」
「そうしましょうか。刈り入れも終わりましたし」
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