第二部 文化祭
Asuna's episode2 いつかの願い
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、いいよ」
「えっ……」
予想外の返事。
「俺はもう部屋に帰るしさ。アスナも、あまり無理はするなよ」
そう言って、和人が軽く投げたスポーツ飲料水を受け取る。アクアリアス、カロリー0%と書かれていた。
「水分補給は怠るなよ。……そういやアスナ、最近明るくなったよな」
「えっ? そ、そうかな?」
「ああ。よく笑うようになったし」
──だとしたら、それは、キリト君のおかげだよ。
その言葉は明日奈の喉元まで来ていたのに、サッと引っ込んでしまった。
和人は続ける。
「何せ、あのアスナがダイエットなんてするようになったんだからな」
「……ダイエット?」
そんなことをした覚えはない。
「えっ、ここで狩りを続けてるのは、そういう目的じゃなかったのか?」
「ええ。違うけど……」
「そ、そうだったのか。いや、アスナ最近、ちょっと太ってきたからさ。てっきり痩せようと思ってここへ通ってたのかと……まあ痩せるほど太ってないと俺は思うけど、女の子の感覚ってよくわからないし」
──アスナ最近、ちょっと太ってきたからさ
──てっきり痩せようと思ってここへ通ってたのかと
「ちょっと待てよ。ダイエットじゃないとなれば、どうしてアスナはここにいるんだ? こんなところに、いったい何しに来てるんだよ……って、ア、アスナさん?」
「……太ってきた、ですって?」
「あっ、いや……で、でもアスナはちょっと太るくらいが丁度いいんじゃないか?」
「それってどういう意味よ!!」
「だ、だってアスナは元々が細すぎるじゃないか……そんなんでよく剣なんか振れるなって感じだし、結構心配なんだよ」
──元々が細すぎる
──心配なんだよ
乙女たる明日奈をときめかせるには、もうその言葉だけで十分だった。
明日奈はくすっと笑い、そして呟く。
「……だめだよ、そんなこと言っちゃ。女の子なんて、案外単純なんだから……」
「な、なんだって?」
和人の問いに、明日奈はにっこりと答えた。
「なんでもないよ。さ、帰るならさっさと帰っちゃおう? わたしも疲れてきちゃったし」
「そ、そうだ、な……?」
「……なによ」
「い、いや……いきなりご機嫌になったなあって思ってさ……今の間に、何か嬉しいことでもあったかなあ、なんて」
「……ふふっ。さあ、どうでしょうね?」
──君に会えたってだけで、わたしは幸せなんだよ。
風に乗せて、小さく紡いだその言葉は、和人の耳にはきっと届いていないだろう。
それでも、いつかは、その心に届きますように。
明日奈の淡い願いが本当に届くのは、もう少し先の話。
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