暁 〜小説投稿サイト〜
私立アインクラッド学園
第二部 文化祭
Asuna's episode2 いつかの願い
[1/2]

[8]前話 前書き [1] 最後 [2]次話
「──はあっ!!」

 明日奈の細剣が赤く光り、人型モンスターの胸を真っ直ぐに貫いた。力尽きた相手の体が、ガラスを叩き割ったような破砕音と共に四散する。最初のうちは少しばかり抵抗があったものだが、今では手慣れたものだ。明日奈は一息つくと、近くにあった岩に腰かけた。
 明日奈がいるのは、学園をやや遠く離れた森。わざわざこんなところまで来たのには、もちろん他でもない理由がある。
 ──キリト君、来てないかな。
 和人は、よくこの森でモンスター狩りをしている。こうして明日奈も狩りを続けていれば、きっといつかは会えるだろう。
 明日奈がこの気持ちに気がついたのは、いったいいつ頃のことだっただろうか。
 少し前まで、桐ヶ谷和人のことは大嫌いだった。何の努力もしていないくせに、成績はなぜだかいつも上位にランクイン。こんなやつに負けてたまるかと、明日奈は彼に対して対抗心さえ抱いていた。しかし、彼のいろいろな面を知っていくうち、明日奈の心は変化していった。
 その今の"心"を、小さく呟く。

「……わたしは、キリト君のことが、す──」
「えっ、呼んだ?」
「きゃっ!?」

 明日奈は悲鳴を上げ、慌てて声のした方向を振り向く。立っていたのは、クラスメートの……

「キ、キリトくん!?」
「や、やあ、アスナ。ところで今、俺のこと呼んで……」
「さ、さぁ? 気のせいよ、きっと」

 誤魔化そうとするも。

「そうかなあ……だって今、確かに」
「呼んでないって言ってるでしょ!」
「わ、悪い」

 ──さすがキリト君、鋭いんだから……
 じとっと横目で彼を見るも、長続きしない。和人のことを考えただけでも顔が綻ぶのに、一目見てしまえばくすっと笑わずにはいられなくなるのだ。
 明日奈が突然自分を見て吹き出したことに驚いたのか、和人が苦笑いを浮かべて言う。

「お、俺の顔に何かついてる……?」

 それがまたおかしくて、明日奈に更なる笑いを誘う。失礼だから笑ってはいけないとわかっていても、どうしても堪え切れない。

「ううん、何にもついてないよ」

 くすくす笑い、言う。

「……何もついてないのに笑われる俺の顔って、いったい……」
「だって君、おかしいんだもん。見てるだけでも十分面白いわ」
「だからそれが悲しいんだよ、俺は……まあ、学園一の美人?狂剣士?様の笑顔を拝めただけでもラッキーだと思っ」
「何か言った?」

 和人の言葉は、明日奈の迫力を帯びた声によって遮られた。その声音は、和人にそれ以上は言わせまいとしている。問答無用で黙らされた彼に、明日奈は溜め息混じりに言う。

「……君は、このあとどうするの? キリト君がどうしてもって言うなら、わたしが狩りを手伝って差し上げなくもないけど」
「いや
[8]前話 前書き [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ