初デートの予定外
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ならば精霊関連で何かを発見した、もしくは何かが起きたかを察知したのか。
そうしていると点蔵も気付く。
……祭りの様子が……。
先程までは喜びや騒ぎといった祭りとしては当たり前の感情が強く見えたのだが今では戸惑いや驚き───そして何か期待の感情が色濃くなっている。
祭りならば何かサプライズがあるから発生はしない感情とは言わないが……これは何かが違うと忍者の経験が語っている。
そうしてそちらの方に意識を向けていたせいか。傷有り殿が最初に何かを言ったのを聞きのがした。
「───いな時間を送りました……」
恐らく彼女も聞かすつもりで言った小さな声。
途中あたりに彼女の顔を見てつい癖で読唇を使ってしまったせいで聞き取ってしまった言葉。
最初の言葉は確かに聞き取れなかったがこれだけ聞き取れば逆算して何を言ったか解る。
……幸いな時間を送りました……で御座るか……。
色んな意味で取れる言葉ではある。
だからこそ自分はどんな意味で取るべきかをつい悩み
「───」
横に振う事でするべきではない、と断じた。
今の言葉はこちらに聞かすつもりはなかった言葉だ。それに対して勝手に自分が意味づけするのは間違いであるし、自分のような数日限りの付き合いでする事ではなかろう、と。
だがいきなりという感覚で
「点蔵様。上層に行ってみませんか?」
といきなり誘われた。
想像もしていなかった言葉に思わず返事することも忘れて視線を傷有り殿に集中してしまう。
まさか自分の都合のいい幻聴を聞いているのでは御座らんか、と思い耳も集中させ
「私、上層まで行けますので」
幸せな妄想であることは振り払われた。
だがそれだと逆に何故、と思ってしまうのは性格か習慣か。
「え、いや……その……何かご了見でも?」
「───点蔵様と一緒に行ってみたいのです」
「───」
瞬間沈黙を発動する自分を思わず客観的に見ながら自分の反応は外道メンバーによるものと思考が浮かぶが一瞬で消去する。
このモテない忍者に春が来たので御座るか? とかいやただの馬鹿な忍者の戯けた勘違いと率直な現実意見が脳内でかち合うが、それ以上に傷有り殿のその透明な笑みに対して反応した感情がどう答えるかを悩ませた。
これが何かを隠す為だけの透明ならばただ受け答えをしよう。
そうすれば少なくともこの距離感による誘いをそのまま受け入れる事が出来る。
しかしこの透明さは彼女の素の感情によって生まれた物であった。
それに対してただの一介の忍者であり、余所者である自分がどう答えればいいのか。
人生経験の少なさか、もしくは自分が阿呆だから起きる躊躇いか。
ただ一点。彼女が自分のような者に無意味な傷をつけないようなとそれだけを考え
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